2014/04/11

【絵本】日本の土木事情に警鐘を鳴らす『ふたつの国の物語』

ランドスケープ・アーキテクトの小川総一郎氏による子ども向けの絵本。文明の進んだシブの国と、未開のアトの国。立派なインフラが整備されたシブでは若者の土木離れが進み、アトから安い労働力を受け入れることに。アトの若者は熱心に働き、技術を身に着けて大きな工事も任されるようになる。その先に待っているのは、いま日本で問題になっている事態そのものだ。絵本という素材を通し、土木産業の抱える構造を端的に示す。暖かなタッチの水彩画で描かれる現場は、輝いて見えるのだが…。

 土木はあらゆるライフラインを整備するために必要なだけでなく、自然との共存もテーマになる。水の流れ、食物、空気の浄化などを自然環境が担っていることは、誰でも知っている。これまで土木は自然を破壊し、征服する行為と一般には思われてきたが、本書では、自然を再生し、都市に取り込んでいくこともできる技術であると主張する。担い手不足が深刻化しているこの業界に必要な手立ては、仕事の意義と可能性をしっかりと若い世代に伝えていくことだろう。絵本では「高い給料」がポイントにもなっているところも重要な視点だ。
(理工図書、1500円+税)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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