2014/04/23

【BIM】鉄骨構造物専用CAD 構造と設備データを連係強化

スリーブ設置の可否ゾーンを色分けで明示(清水建設-特許申請中)
「これからはモデリング業務にも積極的に乗り出す」と、片山ストラテックの熊谷和彦鉄構事業部副事業部長は手応えを口にする。建築プロジェクトにBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入が拡大する中で、40年前に自社開発した鉄骨構造物専用CAD『KAP』は構造モデルと設備モデルのつなぎ役として有効活用され、それに呼応するように近年はユーザーからのモデリング業務依頼が目立つようになってきた。
 社内の製図省力化を目的にKAPを開発した同社が外販を始めたのは30年前。ゼネコンや全国のファブリケーターを中心に、ライセンス数は550件に達する。初期導入から高度利用まで幅広い実務サポートを展開。BIMの拡大を背景に、近年は年30件ほどのモデリング業務を受託しており、累計で120件を超える業務実績がある。
 熊谷氏は「KAPユーザーからの評価が業務依頼につながっている。3次元モデリングに加え、積算資料の作成も含め事業の幅を広げていく。2014年度は倍増となる年60件ぐらいまで業務件数を伸ばしたい」と明かす。BIM導入を急拡大するゼネコンとともに、3次元モデル対応が求められようになってきたファブリケーターからの依頼も期待でき、新たな事業として社内の期待も大きい。
 そもそもKAPは、鉄骨構造物に対する幅広い適用範囲が売りだ。「鉄骨加工のやり方は企業によって異なり、その取り合いまで細かく再現している。メーカーの製品も多数データ化しており、仕口モデルはざっと3000種類を超える」とは鉄構事業部鉄構システム部の播磨裕敏部長。新たな工法や材料もユーザーの仕様どおりに提供している。
モデルには寸法線も付与
評価の高い機能には、ウェブアプリケーションがある。これはブラウザを介し、3次元モデル化された工事データを閲覧できる仕組み。スマートフォンからもアクセスできる手軽さだ。「まさに必要な時に確認できるBIMの発想に通じている」(熊谷氏)。現場が使いやすいように、3次元モデルには寸法線も付与するこだわりようだ。
 近年のBIM普及を背景に、構造モデルと設備モデルのデータ連携が求められるようになり、関連ソフトとのデータ連携も強化してきた。構造設計ソフトとはユニオンシステム『SS3』などに加え、清水建設の独自構造ファイル形式などとも連携できる。設備設計ソフトとはダイテックなど主要ベンダーとデータ連携の枠組みを整えた。
 そもそも設備業者は鉄骨の伏図からスリーブ位置を決定し、その場所を加筆して鉄骨ファブにデータを渡す。ファブ側はスリーブの補強対策を加味し、その判定結果を設備業者に返す。構造部分には細かな取り合いが含まれないため、KAPが現場の納まり情報を補助する役割を担い、構造と設備の取り合いも同様にKAPが問題解決を行う。
 清水建設、ダイテックの2者と共同開発したシステムでは、鉄骨躯体モデル上にスリーブ設置場所の可否ゾーンを視覚化する仕組みを実現した。現時点で4物件に適用済み。設備業者は事前に鉄骨躯体との干渉や、スリーブ配置のNGゾーンをあらかじめ確認することができ、突然の設計変更にも迅速に対応できる効果を生んでいる。
 熊谷氏は「BIMの成功は関連データをどうつなぐか、プロジェクト関係者の情報共有が図られなければ意味を成さない。その点でも構造モデルと設備モデルをつなぐKAPの役割は大きい」と確信している。 *KAP(カップ)=カタヤマ・アプリケーション・プログラミング
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