政府が成長戦略の柱として進めるインフラ輸出。この動きを建設業がどう取り込んでいくか、注目される。 写真はJR4社が新幹線システムを国際基準とするために立ち上げた国際高速鉄道協会の初会合 |
B 『2020年に約30兆円の受注獲得』を目標に掲げ、トップセールスや経済協力を進めているものの、他国との競争は激しさを増している。ただ政府は、日本の人口が減る中で、国内向けインフラ整備だけでは関係する産業の成長はないとのスタンスだ。
C 3月に開いたインフラ輸出の官民連携強化に向けたシンポジウムには、定員250人を大きく上回る430人が参加し、熱気を帯びていた。インフラ案件形成・受注の『成功の方程式』をみつけるために、参加者は熱心にメモをとっていた。市場は不透明だけど乗り遅れるわけにはいかないといったところだ。
D 日本企業が海外展開する際のリスクをカバーする「貿易保険法改正案」も4日に国会で可決、成立し、11日に改正法が公布された。また、経済産業省が国際展開戦略の取り組みを検証、今後の方針の検討に着手している。同戦略のうちの新興国戦略であるインフラ・システム輸出は、相手国の要求に合致した提案ができなかったことなどが課題に挙げられ、企業支援策を一層強化するとともに、インフラ・人材育成協力などによって地域ごとの重点戦略を強化して市場を開拓するとの方向性を示している。
A こうした動きは建設業にとって海外受注増加の追い風になるのかな。
B 政府の支援策や制度面での対応は、受注獲得の後押しをすることは確かだ。ただ建設業の仕事にすべてが直結しているとは言い難い。最近、国際高速鉄道協会が設立されたが、新幹線の車両や運行システムなどの輸出がメーカー中心で、建設業にはあまり関係なさそうだ。
C これまで経産省などが委託したFS(事業化調査)案件を見ても、建設業に関係する案件はあまり多くない。ただ建設業が確実に関与できるのは、地域的にはASEAN(東南アジア諸国連合)があると思う。さらに、今後は資源外交との連携による港湾や道路などの整備予定があるアフリカにも可能性が出てくるだろう。これまで政情不安やテロなど建設工事でもリスクが大きいと言われてきたけど、カントリーリスクまで対象を拡大した改正貿易保険法が、リスクヘッジの役割を担う。
A 国内建設市場は倒産が激減しているようだけど。
B 東京商工リサーチ調査では、13年度建設業倒産件数は、前年度比2割減の2280件にとどまった。数字上はバブル期だった1990年度に近い水準で、倒産件数と建設業界の景気動向がリンクしているとすれば、今の状況は過去のバブル期と同じ環境と言える。
C 業界景気がこれまで減少の一途だった公共工事受注をテコに回復しつつあることは確かだ。でも企業収益を見るとバブル期のような業界景気にあるとは決して言えない。
D 倒産件数が中小企業金融円滑化法によって抑制されたことに加え、建設市場が回復しつつある中で減少しているのは事実だ。ただし、これまでの倒産減少傾向に、実は“余力を残した市場退場”が含まれていない。リーマン・ショック後、法的な倒産に追い込まれる前に事業を売却したり廃業するケースが、専門工事業で多発したと言われている。
B 確かにそれが現在の職人不足や躯体職種に顕著な担い手不足を招いた理由とも言われるが。
A 今後の倒産動向についてはどう見ているの。
D 建設市場は短中期で減少する要素は今のところ見あたらない。でも長期的な展望に不安を抱いているとしたら、専門工事業を中心に倒産前の余力を残した市場退場が、数年後には起きないとも限らない。
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