2014/04/09

【BIM】改修とインフラメンテに威力を発揮する小型3Dスキャナー

改修工事のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入やインフラメンテナンスの高度化に向けて、3Dスキャナーの活用に注目が集まっている。
 建築設備やプラントの改修工事では、BIMデータと現況の3次元座標データ(点群)との比較や組み合わせにより、既設・新設部分の正確な3次元モデルや施工図の作成、関係者間の合意形成、干渉や施工手順の確認、生産ライン変更の検討などに活用されている。出来形の点群データと当初の設計データを比較することによる検査も可能になる。インフラメンテナンス分野では、定点観測による変位計測や既存の盛土量の把握などに活用され始めた。伝統建築のデジタルアーカイブ作成にも使われている。

 建築・土木の現場で活用が進む背景の1つに、スキャナーの性能や携帯性の向上が挙げられる。計測方式には三角法方式、飛行時間型、位相差方式の3方式のうち、それぞれ計測時間が短い、計測範囲が広いといったメリットがある。
 米ファロー社の「FARO Laser Scanner Focus3D」シリーズは、大量の点群データを短時間で取得できる「位相差方式」を採用しながら、測定範囲の距離を伸ばしてきた。
 最新モデルの「同X 130」「同X 330」は、範囲誤差2mmの高精度のまま、それぞれ130m、330mまで計測可能。GPS(全地球測位システム)受信機による位置情報の付加や、日光の影響などによる“ノイズ”の抑制など、屋外使用に必要な機能も搭載している。
 また、「他社に先駆けてスキャナーの小型化・軽量化に取り組んできた」とは、ファロージャパンの飯田剛弘マーケティングマネージャー。同シリーズは重量が5・2㎏、本体サイズが240mm×200mm×100mmで「辞書2冊分の感覚で持ち運べる」。込み入った設備室・天井裏などにも持ち込める。
歩道橋耐震工事前の現況把握や設計図作成にも活用(提供:アイセイ)

 離れた位置から一度に大量のデータを測定できるため、安全な場所から少人数で計測できる。データを活用する技術者本人でなくても、また特別な訓練を受けていない作業員でも必要なデータを確保できる。一度計測しておけば、取り忘れが少なく、取得したデータは構造・熱流体・光解析や3Dプリンターなどさまざまに再利用できる。
 高精度スキャナーの価格は従来、数千万円だったが、同シリーズでは数百万円のモデルもそろえている。
 建設業や製造業以外にも、「事故現場の再現や遺跡の保存、映像制作のロケハンなど多分野に使われている」。今後はより身近な技術として社会に浸透していきそうだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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