完成パース。環境配慮と地域貢献を大きなテーマとしている |
事業地は阪急電鉄・梅田駅の東側約200mに位置し、同線と国道423号線(新御堂筋)に挟まれた一等地。以前は市立梅田東小学校があったこの地を売却する入札が2011年にあり、常翔学園が落札。服部建築事務所・石本建築事務所・安井建築設計事務所JVによる設計がスタートした。学校跡地という土地が持つ背景や大阪市の意向などを考慮しながら、大阪工業大学など3大学、2高校、2中学を運営する同学園のフラッグシップキャンパスとしての設計をまとめあげた。
◆グリーン・スクールタワー/拡大可能な「ZES」
コンセプトは梅田に建つ「グリーン・スクールタワー」。タワー型キャンパスの特性を生かした省CO2技術をふんだんに取り入れている。
多機能ダブルスキン |
北側の壁面沿いは吹き抜け空間を設けてゼロ・エネルギー・スペース(ZES)と位置付けた。太陽光発電と省エネルギー技術を駆使し、この部分のエネルギー需給をバランスさせ2次エネルギー消費をゼロとする計画とした。ZESはエネルギー制御を最適化することによって拡大させていくことができ、施設供用後も建物とその利用者がともに環境性能を高めていける仕掛けだ。
このほか、室内の明るさ感予測と補正に基づいて照明やブラインドを制御し、最小の電力消費で必要な性能確保を図るリアル・アピアランス(視環境)照明制御などの先進技術も組み合わせるなど、あらゆる部分で快適性と省エネ性の両立を図り、建物全体で約40%のCO2削減を実現可能としている。
◆帰宅困難者の受け入れ/750人を5日間収容
地域連携の「防災情報マップ」 |
災害時は在館者に加え、一時避難者や帰宅困難者も受け入れる計画で、平時はZESに使っている太陽光発電と、非常用発電のエネルギーや備蓄する飲料水・食料などによって約750人を5日間収容することができるという。
また、都心とはいえ、南海トラフ地震が発生すれば最悪、浸水も考えられるため、メーンの機械室を5階、太陽光発電の蓄電池は12階に配置。法令上1階に設置する防災センターについては、1階と同機能のものを5階にも設け、万全を期している。
緑豊かな公開空地「常翔の杜」 |
さらに、1階や外部空間には緑豊かな公開空地「常翔の杜」やギャラリー、低層部に講演利用を主目的とする600人収容の多機能型コンベンションホールやカフェ、ラウンジなど市民らが利用できるスペースを数多く設置。地下は梅田一帯に広がる地下街と接続させ、まち全体の回遊性向上や活性化の一翼を担っていく。
◆キャンパス自体が教材/学園機能を縦に凝縮
キャンパス機能としては大阪工業大学の工学デザイン分野の包括的な教育拠点と位置付けられており、一般には平面的に配置されるキャンパスのさまざまな機能を縦に凝縮して積み上げた。ZESの吹き抜け空間はコミュニケーションボイドとなって学年や学科などを縦につないでいる。
この施設ではさまざまな環境技術や制震デバイスが見やすいよう配慮されており、タワーにある環境技術の全体像を体験するエコツアーも予定され、キャンパス自体が建築系を始めとする学生の教材ともなる。
完成後、ここで質の高い環境教育が展開され、多くの学生が巣立っていくことが期待されている。
◆事業概要
・建築主=常翔学園
・設計・監理=服部建築事務所・石本建築事務所・安井建築設計事務所JV
・施工=西松建設、きんでん
・敷地面積=約4650㎡
・建築面積=約2416㎡
・規模=S一部SRC造地下2階地上22階建て塔屋1層延べ約3万3329㎡
・最高高さ=約125m
・建設地=大阪市北区茶屋町50ほか
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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