2014/04/12

【現場最前線】構造物の下を縫うシールドトンネル 来月発進

重さ330トンのシールド機は220トン吊りレッカーで深さ33メートルの立杭に降ろして組み立てた
大雨による浸水被害を軽減するため東京都下水道局が江東区で建設している、江東幹線工事は、軟弱地盤の中で地下鉄東西線など重要構造物の間を縫うようにトンネルを構築する難工事だ。中折れ式の泥水式シールド機の路線上には、近接する重要構造物、可燃性ガスを含む地盤、急曲線個所などの難関が待ち構える。施工を担当する大豊建設・錢高組JVは、重要構造物への影響を抑制するため、「トライアル施工」や地山の乱れを測定する探査装置の装備により、地盤に最適な掘進管理方法を選定するなど、技術と知恵を結集し、安全で円滑な施工に備える。難所続きのルートを掘り進む重さ330tのシールド機は、5月に控えた出番を静かに待っている。

◇シールド機を待ち受ける難所の数々

 仕上がり内径6mの江東幹線は、区のほぼ中央(東陽6)にある発進立坑から建設中の江東ポンプ所(東雲2)までの長さ4488mを結ぶ。このうち、大豊建設JVは2015年7月までに初弾の2173mを施工する。 
 路線には重要構造物のほか、最小曲線半径30mを始めとする急曲線個所も多い。「シールド機の性能や地山の特性がつかみ切れない段階で、いきなり難所がくる」。安藤徹所長がこう指摘する最初の難関はシールド機発進直後に訪れる。曲線半径50mの急曲線に加え、NTTのとう道、水道管、水管橋基礎杭を避けながらの掘進となる。
 今回の工事で最大の難所となる東西線との交差部ではトンネルの直上約5mに同線が近接する。列車運行への影響を最小限に抑えるためのトライアル施工では、東西線と交差する前の路線に計測機器を設置して東西線トンネルと同位置の地中の変位を計測し、事前解析結果の妥当性を確認するとともに最適な掘進方法を選定する。
 シールド機に装備した探査装置は、地山の乱れ範囲を貫入試験で測定し、乱れに応じた裏込注入量を算定する。また、同時裏込め注入設備によって地山のゆるみを抑制するなど路面沈下、近接構造物対策に万全を期している。
 重要構造物への影響把握では、約40件を対象に沈下量や傾斜の計測を行い、24時間モニタリングするなど徹底した監視体制を構築している。路線上には大正時代に建設された橋梁もあり、鈴木高広副所長は「当時の設計図書が不明な構造物もあり、関係者協議が難航した物件もあった」と振り返る。

◇トンネル内外で安全管理徹底

 トンネル路線上の地下水には可燃性ガスが溶存しており、トンネル内に地下水が侵入すれば、爆発事故につながる恐れもある。このため、引火要因となるシールド機内部の蛍光灯や電気機器はすべて防爆仕様にしている。ほぼ全線に使用する二次覆工一体型合成セグメントには石川島建材工業の鋼殻と鉄筋コンクリートを一体化した「ICセグメント」を採用する。安藤所長は「セグメントの厚さを薄型化でき、シールド機外径を縮小できるため、排出土砂の抑制につながるなどのメリットがある」と説明する。
立杭内で発進を待つシールド機

 外径6.84mのシールド機は日立造船製で、220t吊りレッカーを使い深さ約33mの立坑に降ろして組み立てた。最終的に約4.5㎞の長距離掘進となるトンネルは、日進量が平均約7.5m。2交代制で昼夜を問わずに地中を掘り進む。
発進基地では土砂ピットなどの整備が進む
泥水処理設備、セグメントヤードなどがある発進基地は100×20mの細長い敷地形状で、交通量の多い都道に面している。安藤所長は「残土搬出の10tダンプトラックは1日当たり100台を超える。セグメントを運ぶトレーラーも1日15台程度を見込んでいるため、歩行者など第三者への安全管理も徹底する必要がある」と資機材などの搬出入にも細心の注意を払う。

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