急ピッチで造成工事が進む女川駅周辺部 |
宮城県の東端、牡鹿半島の基部に位置する同町は、日本有数の漁港である女川漁港を中心に水産業や観光産業が盛んな港町だったが、津波により人口の約1割が死亡・行方不明となり、住宅の約7割が被災した。
早期復興を目指す同町は、都市再生機構(UR)とパートナーシップ協定および復興まちづくり事業協定を結び、スピード感ある事業を展開してきた。
その代表例の一つと言えるのが、CM方式の活用だ。CMR(コンストラクション・マネジャー)は鹿島・オオバJVが担当している。
町中心部で約200haの市街地整備を実施するとともに、女川駅周辺部には、公共公益施設や商業・業務施設を集約。一方、離半島部は浜(集落)ごとに計14地区の集落整備を行う。
このうち、中心部の市街地整備は5ブロックに分けて段階的に実施。市街地縁辺部の山を切り崩し、その土で低地をかさ上げする。切土量および盛土量は各500万m3に上る。
CMRの業務は、基本設計の修正から始まり、実施設計や施工計画を始めとする各種計画を策定。これらを整地の流れと同時並行させることで全体工程の短縮を図る。
切盛土には、大型の建設機械を投入し、効率的に施工している。例えばバックホウのバケット容量は5m3で、一度に10tダンプ1台分の土をすくうことができる。また、GPS(全地球測位システム)を使った現場測量と盛土の締め固めの連動作業により、高精度でスピード感のある施工を進めている。
環境面では、一部重機にハイブリッド車を導入しているほか、現地で発生したコンクリート廃材を埋め戻し材として利用するなどの配慮を行っている。
来年3月の女川駅開業と合わせてまち開きを予定している駅周辺部では、大型重機が絶え間なく動いている。
高橋秀充JV所長(鹿島)は「これまでは、ほぼ予定どおりに工事が進んでいるが、他市町の復興まちづくりも本格化するため、労務と資機材の確保には十分な配慮が必要だ。特に女川町は地区が点在しており、各種協議の制約条件もあるため、現地に入るタイミングが難しい」としつつ「安全第一にゼネコンの底力で1日も早い復興に向けて取り組んでいきたい」と、18年度の工事完了への決意を語る。
町内外から集まり情報交流間で模型を見ながら語り合う住民ら |
3月15日には、こうした復興まちづくりの情報発信や町民と来町者との交流・懇談の拠点となる「復興まちづくり情報交流館」が完成。休日を中心に、町内外からの来場者でにぎわっているという。
【新駅舎・温泉は来春開業施工は戸田】
坂茂氏が設計した新駅舎完成パース |
JR女川駅の新駅舎と町営温泉施設「ゆぽっぽ」との合築施設が3月25日、戸田建設の施工で本格着工した。設計はプリツカー賞を受賞した世界的建築家の坂茂氏(坂茂建築設計代表)が手掛けた。15年3月の開業を目指す。
規模はS一部木造3階建て延べ約900㎡。1階は駅舎、2階が温泉機能、3階は展望フロアや休憩室となる。
外観は町の鳥・うみねこが翼を広げる姿をイメージさせるデザインとなっている。
また、駅から女川湾に面した震災メモリアル公園に向かって伸びるプロムナード(散歩道)の整備も計画されている。
【8棟200戸の入居始まる施工は竹中・仙建JV】
都市再生機構(UR)が女川町民陸上競技場跡地地区に整備を進めていた災害公営住宅の「運動公園住宅」が竣工=写真、3月28日に竣工式が開かれるとともに、8棟全200戸の入居が始まった。基本設計はURと山設計工房、実施設計および施工は竹中工務店・仙建工業JVが担当した。
規模は1-5号棟がRC造4階建て、6-8号棟は同造3階建てで、総延べ床面積は1万6595㎡。URが宮城県内で実施している復興まちづくりで、最大規模のRC造集合住宅となる。
平坦な土地が少ない中、早期に住宅を整備するため、高台にあった陸上競技場を解体し、わずか11カ月でスピード施工した。
具体的には柱と梁、床版を県内3カ所の工場で製作したプレキャスト部材を使い、現場で柱梁接合部と梁、床上にコンクリートを打設して一体化することで省力・省人化を実現した。
発災から3年余り。仮設住宅暮らしを余儀なくされていた被災者にとって、待ちに待った新生活がスタートした。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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