2014/04/02

【建築】傷も汚れも歴史…文化財の旅館にカフェ のぶひろアーキテクツ

(写真:齋藤さだむ氏)
茨城県桜川市の真壁地区。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、見世蔵などの建造物が数多く残る。その中に昭和4年(1929年)建築で国の登録文化財の橋本旅館がある。
 2階建ての旅館は東日本大震災で被害が出たうえ、施主の父親が震災後に亡くなった。父親が経営していた旅館をどうしようか悩んだが、旅館を残しつつ1階の食堂と厨房(ちゅうぼう)を改修し、新たにカフェ「橋本珈琲」を設けることにした。

 のぶひろアーキテクツ(古河市)の加藤誠洋代表は、真壁が同保存地区の指定を受けるのに必要な調査を12年ほど前に実施するなど、以前から真壁にかかわりを持っていた。設計に当たり「橋本旅館も知っている建物なのでやりやすかった」と語る。
 登録文化財であるため、「昭和初期の旅館建築の良さを生かす」ことにした。建築後に追加されたベニヤ板、クロス、カーペットをはがし、構造を一部補強。“元の建物”に戻す中で職人に天井をはがされ、梁がむき出しになってしまうアクシデントもあったが、「傷や汚れも歴史であり、情報を消さないよう」磨かずそのまま見せることにした。新しく追加した個所も、古く見えるような加工はしなかった。
 さらに、文化財が広がる「街を歩く人のための装置」として、案内の拠点にもなるテークアウトコーナーを提案。店は13年3月にオープンした。今後も、地区への来訪者が増えるよう「このような店が増えていけば」と期待を寄せる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

Related Posts:

  • 【安藤忠雄】直島にANDO MUSEUMが完成 古民家とRC空間が融合 ベネッセホールディングスが展開する「アートサイト直島」を核に、現代アートの島として知られる香川県直島町。ここに建築家の安藤忠雄氏が設計した「ANDO MUSEUM」が完成した=写真。古民家にRC造の空間を組み合わせた新旧一体の建築となっている。12日のオープンに先立ち9日、現地で完成式典が行われた。神事の後、安藤氏やベネッセホールディングス取締役会長の福武總一郎氏らがテープカットした。 テープカット 「既存の環境に対し、いかに最小限の表… Read More
  • 【新国立競技場】最優秀のザハが作品解説 19日に国際コンペ表彰式 日本スポーツ振興センターは19日、東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京で、新国立競技場基本構想国際デザイン・コンクールの表彰式を開く。昨年11月に最優秀賞に選定したイラク出身で英国在住の女性建築家、ザハ・ハディド氏を表彰するほか、同氏による作品のプレゼンテーションなどが行われる。 国際コンペでは、国内外から応募のあった46点(国内12、海外34)の中から、最優秀賞のほか、優秀案にコックス・アーキテクチャーピーティーワイ エルティディ(オー… Read More
  • 【建築】平田晃久の空間構成でミラノサローネ展示 LEXUS LEXUS(レクサス)は、4月にイタリアで開かれるミラノデザインウィーク2013(ミラノサローネ)で、建築家・平田晃久氏とのコラボレーションによる展示を行う。「amazing flow」をコンセプトに、平田氏が空間構成を手掛ける。2012年に創設した国際デザインコンペ「LEXUS DESIGN AWARD」の入賞作品も展示する。 展示は、デザインを「流れ」の視点でとらえ、さまざまな感覚を凝縮させた空間表現となる。平田氏は「建築を“からまりしろ… Read More
  • 【建築】「大阪北御堂」浄土真宗本願寺派本願寺津村別院が改修中 大阪のビジネス街の中心に、「北御堂」の愛称で市民に親しまれている浄土真宗本願寺派 本願寺津村別院がある。この施設は特徴的な近代建築としても知られているが、築後50年以上が経過して老朽化が目立つことから、平成の大改修が行われている。現在は足場に覆われてその外観を見ることはできないが、大改修は10月中に終わり、11月には完成を祝う法要が盛大に営まれ、昔の建築イメージを残した姿がお披露目される。  北御堂の歴史は古く、1597年に今ある場所へ集会所… Read More
  • 【竣工】「WATERRAS」淡路町二丁目西部地区再開発が完成! 江戸時代には大名屋敷、武家屋敷が広がり、明治時代には市電・鉄道の結節点として栄えていた淡路町地域。しかし、近年は民間建物の更新の遅れや人口の減少の進展に伴う地域コミュニティーの停滞に加え、緑やオープンスペースの少ないことに伴う防災・環境面の不安が課題となっていた。これらの課題を解決した地域コミュニティーの中核施設「WATERRAS(ワテラス)」が竣工した。 WATERRASには、「輪(コミュニティー)を照らす」、つまり住まう人・働く人・学ぶ人… Read More

0 コメント :

コメントを投稿