2014/04/13

【アジアのハブ空港】羽田空港国際線旅客ターミナルが拡張完了


 「アジアのハブ空港」を目指し、羽田空港が生まれ変わった。東京国際空港ターミナル(TIAT)が、国際線発着枠の拡大に対応するため建設を進めてきた羽田空港国際線旅客ターミナル拡張部が3月30日に供用を始めた。旅客ターミナル本館とサテライト合わせて延べ約7万7000㎡を増築し、首都圏の国際航空需要に応える。2013年には訪日外国人が初めて年間1000万人を超え、20年には東京五輪を控える。さらなるグローバル化に対応していく上でも、新たな役割が期待される。

◇「アジアのハブ空港」奪還


 もともと羽田空港は、首都圏における国際空港の役割を担っていたが、1978年に成田空港が開港して以降、国内線を羽田、国際線が成田という棲み分けがされていた。
 しかし09年に、当時の前原誠司国土交通相が羽田空港ハブ化構想を打ち出したことで、流れが変わった。都心へのアクセス性、24時間空港などで優位性を持つ羽田空港をハブ化することで国際競争力の強化を図ろうというもので、11年6月には成長戦略の一環として国際線発着枠の拡大に対応するため、国際線旅客ターミナル拡張が認められた。
 工事は12年11月から拡張部に着手。「首都圏の空の玄関口の1つとしてふさわしい、本格的な24時間旅客ターミナルの建設と、その着実な運営が最大の使命と考え、運用と拡張を並行して進めてきた」とTIATの田口繁敬常務は語る。
ホテル棟外観


◇出発・到着階分離しシンプルな動線


 本館を北側に道路をまたぐ形で延伸し、道路とエプロンの間の敷地にサテライトを増築した。延べ約15万9000㎡の施設は、延べ約23万6000㎡と約1.5倍に拡張された。このほか、立体駐車場は7階建て延べ6万7000㎡から9階建て8万6000㎡に増床、収容台数は約2300台から約3000台に拡充された。
 増築された長さ約530mのサテライトには固定スポットを8つ増設し合計18スポットとなった。「8スポットのうち、6スポットのゲートラウンジは2階エリアに設置した。従来はゲートラウンジが本館3階のため、搭乗の際に2階に降りる必要があったが、先に2階に降りて搭乗を待つことができる」(小坂始TIAT企画部長)。
 本館3階に搭乗客が集中していたが、サテライトの3階を出発階、2階を到着階と分離させることで、混雑を緩和し、シンプルな動線を確保した。
 3階の出発コンコースは両面ガラス張りで全方向から光が差し込む開放的な空間を実現。3階までの吹き抜けになる2階ゲートラウンジは駐機場を間近に見ることができ、航空機と同じ目線で景色を楽しむことができる。
 屋上には太陽光パネルを多数設置し、ターミナル全体でメガソーラー(1000kW)に匹敵する発電能力を有する。また、ラウンジや祈とう室も新設するなど多様な利用者に対応。サテライトに向かう通路には幅16.8m×高さ2.3mの36面マルチディスプレーを設置し、就航都市の世界遺産を紹介している。
 9月末には、付帯ホテルとなる「ロイヤルパークホテル ザ 羽田」の開業も控えている。規模はRC造8階建て延べ1万1642㎡で、総客室数は313室。このうち保安エリアには、入国手続きをしないで宿泊できる国内初のトランジットホテル17室があり“世界に一番近い日本のホテル"となる。

待合室


◇東京五輪に向け国際競争力強化
 今回の増枠で羽田空港の国際線の年間発着枠は6万回から9万回に拡大される。一方の成田空港は13年暦年発着数が国際線17万5854回、国内線4万5838回と過去最高を記録。14年度中には現在の年間空港容量27万回を30万回に拡大することを目指している。
 とはいえ、羽田と成田を合わせても現時点の国際線発着枠は30万回前後。成長を続けるアジアのライバル空港との差はなかなか縮まらないのが実情だ。
 羽田空港では現在、C滑走路の延伸事業が進められており、5本目となるE滑走路の建設も検討されている。また東京都大田区は、沖合展開事業と再拡張事業で生じた羽田空港跡地のうち約20haに、産業交流拠点の整備を計画している。政府は東京五輪開催の20年までに、外国人観光客を年間2000万人まで増やすことを目指しており、これを実現する上でもさらなる国際競争力の強化が求められている。

出発コンコース


◇事業概要

〈国際線旅客ターミナル拡張部〉
▽設計=梓設計・安井建築設計事務所・ペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツジャパンJV
▽施工=大成建設(立体駐車場、旅客ターミナルビル本館の増築・改修)、竹中工務店(旅客ターミナルビルサテライト増築)
〈ロイヤルパークホテル ザ 羽田〉
▽ホテル経営=日本空港ビルデング
▽ホテル運営=ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ
▽設計=梓設計・安井建築設計事務所・ペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツ・ジャパンJV
▽ホテル内装設計=三菱地所設計
▽インテリア設計=メック・デザイン・インターナショナル
▽施工=大成建設
▽施設計画サポート=三菱地所

Related Posts:

  • 最優秀に立命館大大学院チームの「ふさふさの森」 建築学会の子どものまち・いえコンペ  日本建築学会の子ども教育事業委員会は、東京都港区の建築会館で、学生を対象にした「第2回子どものまち・いえワークショップ提案コンペ」の発表会と公開審査会を開いた。最優秀企画には、立命館大大学院チームの「ふさふさの森」が選ばれた。同作品は実際にワークショップを実施する。  同コンペは、子ども向けの住環境・都市環境教育への関心の高まりを受けて、2011年度にスタートした。学生が、教育プログラム開発の企画段階から積極的に参加できる体制をつくる。今回… Read More
  • 横浜の住宅展示場でスマートセルプロジェクト 12月にモデルハウス完成 説明会で使われた模型  横浜スマートコミュニティ(代表・有馬仁志dSPACE社長)は、横浜市内で「スマートセルプロジェクト」の説明会を開いた=写真。2011年6月に発表した「スマートコミュニティ構想」の実現に向け、市内の住宅展示場にモデルハウスを建設。施設はメーン展示棟、創エネ櫓(やぐら)、そら豆インスタレーションで構成し、12月の完成後は同コミュニティーのコンセプトを国内外に発信するとともに、参加企業の展示や実証の場としていく。  … Read More
  • 最優秀に日建設計案が採用 石巻赤十字病院の増改修設計 日本赤十字社のHP  日本赤十字社は、石巻赤十字病院施設整備事業(増築・改修工事)設計・監理業務の公募型プロポーザルを実施した結果、日建設計を最優秀提案者に特定した。近く契約する予定だ。2013年7月までに実施設計を完了させ、同年8月にも着工する。16年5月の完成を目指す。  同病院は06年に現在地に移築。10年度には救命救急センターの拡充や重症患者管理病棟新設などを盛り込んだ新棟建設計画を策定していたが、11年3月に発生した東日本大震災を… Read More
  • 「大阪まちなみ賞」 7月1日から作品募集 同賞のホームページ  大阪府と大阪市、大阪府建築士会などは「大阪都市景観建築賞(大阪まちなみ賞)」の推薦作品を7月1日から同31日まで、事務局の同士会で受け付ける。  大阪府内でまちの景観をリードする建物や優れた景観を作り上げているまちなみなどを広く公募する。対象は2007年10月から11年7月31日までに完成した建物とまちなみとする。  大阪まちなみ賞は、周辺環境の景観向上に役立つ優れた建物・まちなみを表彰するもので、ことしで32回… Read More
  • 震災後の住まいとは? 仙台でSAU+がディスカッション  建築家ユニット『SAU+(エスエーユープラス)』は21日から24日までの4日間にわたり、仙台市青葉区のせんだいメディアテークで建築作品展2012「東北の住宅が変わる」を開いた。23日には「震災後の住まいについて考える」をテーマとするパネルディスカッションを行い、今後の住まいのあり方などを論じ合った=写真。  ディスカッションには、SAU+メンバーの鈴木弘二氏と佐々木文彦氏、首都圏で設計活動を展開している染谷正弘氏(DSA住環境研究室)、林田… Read More

0 コメント :

コメントを投稿