2014/04/16

【建築】自然の中にそっと建て、さっと撤去できる茶室「ZEROPOD」

不整地や斜面地でも設置可能
 神奈川県逗子市のMARIO DEL MARE一級建築士事務所(下平万里夫代表)は、地上1mに浮かぶ茶室空間「ZEROPOD」を開発した。自然を傷付けず、大自然の中にそっと入り、何も残さずに立ち去る建築物をイメージした同作品は、量産化に向けた検討とともに、首都近郊のイベントなどで展示している。下平氏は、たくさんの人目に触れ「エコリゾートの考え方が認知されるようにしていきたい」と話す。 製作のきっかけは「自然を破壊しない建築」。設計事務所としてリゾート施設などの設計を手掛ける中で、特定の人のために大規模な造成工事によって造りあげられた豪華な別荘建築が短期間で朽ち果て、打ち捨てられている姿を見て「これでは単なる自然破壊だ」と疑問を感じていた。
 人口減少期の到来、コンパクトシティーへの転換といった社会の変化に着目し、「もっと自由に撤去できる建築」の必要性を感じた。当初は建築物を造ろうとしたが、法律の規制から難しく、より簡便なテントを使い、「理想のかたち」を追求。「こういう空間のつくり方を認知してほしかった」と振り返る。
 作品は、自然を傷つける造成工事を不要とするため、支持面に設置した三脚からハンモックのようにロープで上部構造をつり下げる構法を採用。不整地や斜面地であっても水平が保たれる居住空間を生み出した。基礎部分の構造は特許を出願している。
 上部の居住空間は、ロープなしで自立するトラスドーム構造を採用した。風に強いだけではなく、小さなスペースへの設置が可能となり、テラスや室内でも使用できる。
 大きさは、車の荷台に積み込んで移動が可能なサイズ。組立時間も15分から20分程度で完了する。アルミパイプなどで軽量化を図り、重量は約50㎏にとどめている。この重さで3tの荷重にも耐えられる強度を実現した。
 完成作品を各方面で展示し、来場者の反応から大きな手応えを感じている。建築物の建設が難しい自然公園の休憩棟や宿泊施設として、さらには東京五輪で外国からの観戦者を迎えるスポット施設、地上1mの空間を生かした災害時の避難施設など、アイデアや夢は広がっている。そして、空間の考え方が認識され、自然との調和を大切にしてきた「日本人の自然観」がエコリゾートを通じて世界に発信できればと期待している。
MARIO DEL MARE一級建築士事務所 神奈川県逗子市逗子7-1-51。電話046-874-7560

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