2014/10/31

【本】東京駅が4時間で浸水も…警鐘鳴らす『首都水没』土屋信行著

8月20日、広島市を襲った記録的な集中豪雨は甚大な被害をもたらした。大水害は首都東京においても免れない、と警鐘を鳴らすのが本書だ。
 まず、地形的な問題がある。「関東平野の一番低い場所、すなわち洪水が起こったら絶対に水が集まってくる場所に東京がある」。江戸開府以来、首都の水はけをよくするために利根川東遷が行われてきたが、堤防一枚で東京から銚子へ無理やり流れをそらしたものなのだ。それが如実に現れたカスリーン台風の洪水は、開府400年の利根川に対する人為をあざ笑うかのように、東遷以前の利根川、太日川の川筋をたどった。

 そして戦後に現出した東京東部のゼロメートル地帯がある。近代化と高度成長を通じ、急激な地下水汲み上げで地盤沈下を引き起こし、洪水の危険性を高めた。江東区南砂地区では4.5mも沈下した。
 さらに東京の地下に網の目のように張り巡らせた地下鉄の存在がある。狩野川台風並みの洪水が襲うシミュレーションによると、北千住駅の浸水予想は7.25m。この結果、千代田線を通じて東京駅が4時間で浸水するという。
 「早急に盲点を洗い出し手を打たなければ日本は機能を失う」
(文春新書、760円+税)









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