2014/10/04

【素材NOW】土足OKの「木質フローリング」 木材にプラスチック充填したWPC

大建工業が10%台にとどまる非住宅分野の売上構成を、2016年3月期までに30%に引き上げる。マーケット開拓の先遣部隊として組織した市場開発課がターゲットに定めたのは「木質フローリング」分野だった。そもそも非住宅はタイルカーペットや塩ビ系が主流で、汚れや傷がつきやすい木質系の床材は敬遠されてきた。江村賢課長は「40年以上も前に開発した加工技術を生かし、傷に強い土足用のフローリングを商品化できた」と手応えを口にする。写真は採用された良品計画の丸井吉祥寺店。


 4月に組織した市場開発課には、フローリング部門の企画と開発から2人ずつ計4人が集まった。既に非住宅分野では不燃天井材が安定した売れ行きを見せ、数年前からは医療福祉分野をターゲットにドアの専門部隊も動き出していた。手付かずだったのは、住宅分野で強みを発揮している床の部分。市場調査も兼ねた先遣隊としてスタートしたが、商品がなければ動くこともできないことから、営業のきっかけをつくる上でも商品化が急務だった。

江村賢課長
江村課長が「非住宅分野でも、無機質な空間を嫌い、温かみのあるテイストを求める木質系のニーズは少ないながらも存在している」と明かすように、近年の商業店舗では良品計画の丸井吉祥寺店(東京都武蔵野市)で採用されるなど、木質フローリングの可能性を感じていた。
 これまでも要望があれば対応していたこともあり、商品化にはそれほどの時間はかからなかった。採用された施設に出向き、人の多く通る場所の傷の付き具合なども調べ、その性能には自信を持っていた。木質でありながら、ヒール底や傘による凹み傷もほとんどなく、いすなどのキャスターによる傷にも強みを発揮している。
 
これを下支えするのは1970年に独自開発した加工技術「WPC(ウッド・プラスチック・コンビネーション)」。木材組織の導管内にプラスチックを充填することで、天然木の風合いを生かしながら耐摩耗性や耐傷性を確保できる。土足用のフローリングではWPC加工を施した木材を薄くカットし、それを合板基材の表面に張る。商品名『コミュニケーションタフ』シリーズとして9月から販売をスタートした。
 木の種類が違えば導管の空隙比も異なり、プラスチックの充填量も変化する。そもそも木の硬さは内部の空隙に比例しており、スギ材にWPC加工を施した場合、比重は3倍にも増す。シリーズにはオークやウォールナットなど5種類の材質を取りそろえた。国産材普及の政策が動き出す中で「特に柔らかすぎて用途が限られていた国産スギの活用にも貢献できる」(江村課長)と考えている。
 これまで文教施設や商業施設などに木質フローリングを採用する際、表面材の厚さは2mmに設定する慣例があった。従来の土足用フローリングは傷が付いた場合、表面を削ることを前提としていたためだが、WPC加工ではそうしたメンテナンスが必要ない。同社は表面強度も高まることから「厚さ0.3mmにまで薄くしても十分に性能を発揮できる」と説明する。
 厚さ0.3mmのWPC加工材を使った場合の価格は表面材厚2mmの従来品と同等。8月末に東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれたジャパン建材フェアでは自社のブースに1坪だけ非住宅向けのブースを設け、プロユーザーの反応を見た。江村課長は「今後はオフィス向けも含め、新商品の開発を積極的に進めていく」と力強く語る。
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