2014/10/20

【UIAで最優秀受賞】20年間、仙台のNPOで建築教育を続けた渋谷セツコさん

都市や建築のデザイン手法を応用して教育活動に取り組んでいるNPO建築と子どもたちネットワーク仙台(渋谷セツコ代表、建築事務所アク・アク副代表)の「子どもたちが応援する歴史的建造物の震災復興~地域・小学校等との協働プロジェクト」が、UIA(国際建築家連合)のUIA建築と子どもゴールデンキューブ賞(組織賞)の最優秀を受賞した。8月にダーバン(南アフリカ)で行われた受賞式に出席した渋谷代表に、20年以上にわたる活動を振り返ってもらった。

 建築・デザインの専門家を中心に1993年に結成した建築と子どもたちネットワーク仙台は、米国の教育プログラム「建築と子どもたち」と「まちづくり教育」をベースに、歴史的建造物の保全活動とそこでの体験学習を通じて、人工環境への理解を育むとともに、子どもの創造性を伸ばすデザイン教育の1つ。渋谷さんは「リアルな体験を通して科学の目を養い、歴史的な建物から先人の知恵を学ぶことで、建築やまちを含む環境全体をとらえられるよき市民が育つ」と、幼年時に体験から学び、記憶にとどめることの重要性を指摘する。
 受賞対象となった活動の1つは、「毎年のように土鈴作りや堤人形の絵付け教室などに利用してきた」という仙台市の堤町まちかど博物館の登り窯の修復ワークショップ。近隣住民や小学生など延べ400人が参加し震災で崩落した窯からレンガを取り出し、タガネやハンマーを使いながら、つなぎに使われていた粘土をはつり、専門家による再建の準備に備えた。
 一方、天明元年(1781年)に創建され、仙台市の景観重要建造物にも指定されている『旧丸木商店』では、復旧時に新設された格子壁にあしらう紋を南材木小学校の児童がデザインした。総合学習の一環として、伝統的な手法を使った掃除に始まり、デザインの前段として視覚言語の練習やパターンデザイン、紋や屋号の歴史学習などを経て、再建された建物の格子を彩る紋をデザインした。「所有者からの依頼を受けた仕事として取り組んでもらった。遊びではなく、リアルな現場で復興に携われるのは子どもにとっても得難い経験ではないか」と振り返る。
 ほぼ同時期に始まった両活動はAIA(アメリカ建築家協会)からの支援などをもとに、1年以上にわたり続いた。特に窯の修復は「所有者も再建を断念しかけるような地道な作業だった。気が遠くなるような道のりだったが、参加者とともに前だけを見て取り組んだ成果」と子どもや住民との協働を強調する。
 震災直後の2011年4月には、これまで実践してきた10編の教育プログラムを体系的にまとめた『仙台奥州街道建築探検ガイドブック-まち歩きからデザイン学習』を発刊した。20年以上にわたる活動の中で、「学校の中では固定化して見られがちな子どもも、われわれのような外部とかかわることで、見違えるように成長する姿を見てきた」という。それだけに「課題解決にさまざまな知識が要求される総合的な仕事を担う建築家は教育活動にも向いている。もっと教育に携わっていくべきだ」と、職能を生かしてデザイン教育に携わるAIS(アーキテクト・イン・スクール)の重要性を訴える。
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