2014/10/13

【BIM】FMデータをBIMソフトで双方向連携 『GLOOBE2015』

6月の発売以来、好調な売れ行きを続ける福井コンピュータアーキテクトの最新BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト『GLOOBE2015』。同社J-BIM推進室の飯島勇氏は「実は製品カタログに載せていないが、隠れたFM(ファシリティ・マネジメント)への新機能を搭載している」と明かす。そこには、将来的に企画から設計、施工、維持管理までのサイクルをGLOOBEを軸に一気通貫でつなげる同社の狙いがある。

 3次元モデルデータを建物完成後にも効果的に活用するには、どのような仕掛けが有効か。GLOOBE2015の開発に際し、同社は議論を重ねてきた。欧米では維持管理データフォーマットとしてCOBieを活用する動きがあるものの、一貫したデータのやり取りは難しいのが現状。BIMとFMの双方からデータ連携が可能な枠組みを具体化したいと考えていた。
 海外のBIMベンダーが攻勢をかけている日本市場の中で、同社は国産ベンダーとして日本のものづくりに合ったソリューションを提供し、構造、積算、設備などの国産ベンダー各社とデータ共有を図る「J-BIM」連携にも乗り出している。これまで連携の範囲は施工段階にとどまっていたが、FM領域へのアプローチが整えば、GLOOBEを軸に一気通貫のシステム環境を構築できる。

飯島氏は「最近は発注者のBIMに対する認識が高まり、FMへの対応は無視できない状況になってきた」と強調する。BIMとFMのデータ連携では、3次元モデルの中に入れ込んだ維持管理向けの属性情報をいかに出し入れできるかが重要になる。同社が情報共有の標準データフォーマットとして選んだのは、マイクロソフト社のデータベースソフト『Access』で使われるファイル形式「MDB」であった。
 3次元モデルデータの属性情報をAccessを介して集約し、表計算ソフト『Excel』からデータを加筆、修正すれば、その内容が3次元モデルデータ内の属性情報として戻される。項目の追加も自由にできるため、建物完成後に必要な項目を設定することも可能。「何よりもFMデータを双方向にやり取りできるBIMソフトは、世界中探してもGLOOBEだけだ」(飯島氏)。
 同社は世界的に広く活用されている標準フォーマット「IFC」に加え、建築構造分野の標準フォーマットとして注目されている「ST-Bridge」形式にも対応しており、今回の「MDB」を取り入れることで、GLOOBEにはより幅広いデータ連携の枠組みが整備された。
 実際のBIMプロジェクトにFM連携を意識する動きは出てきたものの、建設段階に細かな部分までFM関連の属性情報を構築することは業務上の大きな手間になってしまう。建物の維持管理段階で、どのようなデータが必要か事前に把握できないことも深く関係している。GLOOBEは、まだFMへの道筋を整えたに過ぎないが、これによって確実にFMへのデータ連携は格段にやりやすくなる。
 J-BIM連携に賛同するベンダーの中では、MDBファイル形式に対応したFMソフトの開発が着々と進行しているという。同社は「GLOOBEを軸に、建物ライフサイクルを1つの円としてつなげたい。ぜひBIMの利点を発注者にも届けたい」(同)と考えている。
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