2014/10/25

【現場最前線】鉄骨建方精度は万全! 長野駅新駅ビル(仮称) 新築他

2015年3月の北陸新幹線金沢延伸開業を見据え、長野市が実施する長野駅善光寺口駅前広場整備に合わせる形で、東日本旅客鉄道(JR東日本)が進めている同駅改良工事や善光寺口の新駅ビル新築などの工事が大きな節目を迎える。25日から仮設通路を閉鎖して東西自由通路に切り替え、11月21日には既存駅ビル(MIDORI長野)と新駅ビルの各一部フロアが東西自由通路と直結し、先行オープンする。新駅ビルなどの施工を担当する鉄建・大林組JVの河合和彦作業所長は「この2つの山を乗り越える大事なとき」と気を引き締める。

 鉄建JVは、新駅ビル新築(S造3階建て延べ約1万㎡)、大庇・列柱新築、既存駅ビル改修、立体駐車場新築などを行う「長野駅新駅ビル(仮称)新築他」を担当。同工事の前段で別途実施した解体工事(ミニ駅ビルなど)に伴う障害物撤去などの影響で、約15カ月の契約工期が実働では約13カ月となった。

一丸となり2015年3月の竣工を目指す工事関係者
河合所長は「この2カ月をいかに取り戻すかが一番の課題で、他工事との調整や自由通路を生かしながら施工する点も十分に考慮する必要がある。多岐にわたる関係者との打ち合わせは約30人のJVスタッフがスピード感を持って対応している」と話す。ことし2月に着工し、9月末現在の工事の進捗は出来高で約50%。1日平均で350人程度の作業員(うち夜間作業員約50人)を含め、約400人が現場に従事している。
 工事車両の現場への出入りがバスロータリー、タクシープールと接合しているため、特に通勤・通学時間帯に配慮する必要性や、工事の進捗に合わせて変化する駅利用者のアクセス動線、騒音・振動への配慮が重視される現場条件、厳しい工期を加味し、これまでに新駅ビルの鉄骨建方やコンクリート打設などを状況に応じて早朝の時間帯、既存駅ビル改修に伴う一部工事を夜間に実施するなど、フル回転で進捗を図ってきた。
 新駅ビルは「特に鉄骨建方精度に万全を期した」と品質面での手応えを語る。また、躯体工事の際、トラス筋付き合成床板「フェローデッキ」などの採用で省力化を図り効果を上げた。外・内装などの仕上げ工事にシフトする中、「金属系の工事が多く、工場製作・現場での取り付け作業などが増えるので手戻りがないよう進めていきたい」と注意を払う。

大庇・列柱を駅ビルと一体的整備(16日撮影)
新駅ビル前面では、善光寺山門をイメージした大庇・列柱(高さ約18m、奥行き約15m、幅約140m)の工事も本格化している。主要構造はS造で、大庇にガラスのトップライトを取り付け、その下に長野市産杉材のルーバーを並べるとともに、列柱も同様の杉材で化粧する。
 先行させている東側(MIDORI長野側)の大庇は、東西自由通路への切り替えに合わせて仕上げが進んでいる。西側は鉄骨工事などが進行中で「12月には全体像が見えるようになる」と先を見据える。作業に当たっては、吊り足場の「クイックデッキ」を採用し、安全面や厳しい工期での作業条件に対応している。
 鉄建JVは、MIDORI長野の一部先行オープンに合わせて開業する予定の立体駐車場を含め、東西約400mの範囲で工事を急ピッチで進めており、「1週間経つと景色が変わる感じ」と実感を込める。
 こうした条件などを考慮し、建設業界向けに作られた図面共有用のiPad(アイパッド)アプリ「CheX(チェクロス)」を試行的に取り入れた。「若い職員を中心にタブレット端末を持たせ、現場で活用してもらっている」と業務改善につながる取り組みにも力を注ぐ。
 来年3月の竣工に向け、「長野駅の拠点性向上と、信州の素晴らしい魅力を発信できる施設になるよう、関係者の期待に応えたい」と力強く語る。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【現場最前線】「地域からの信頼が第一」東京都建設局2現場の取り組み 暫定的なモデル道路を整備した放射5号 兵庫橋北側の環境施設帯(築堤+歩道) 道路や河川の整備といった公共事業を進める上で、欠かすことができないのが地域住民とのかかわりだ。プロジェクトの大小にかかわらず、行政が進める1つひとつの事業は地域住民の理解の上に成り立つ。東京都第三建設事務所の「放射第5号線(杉並区久我山2-3丁目間)」と「妙正寺川鷺の宮調節池」は、工事の発注者となる行政や実際の工事を担う建設企業が、計画から施工段階に至るまで地域に積… Read More
  • 【現場最前線】八高線直下を重層立体化 58mをHEP&JESで抜く 東鉄工業・佐藤工業JVは、JR八高線北八王子・小宮間の「石川こ道橋新設工事」に本格着手した。中央自動車道と八高線が交差する厳しい施工環境の下、鉄道運行、高速道路の機能に支障を与えずに線路下に非開削でトンネルを築造するため、58m区間に「HEP&JES工法」を採用し、鉄道工事のエキスパートとして培ってきた技術力を生かし、万全の体制で施工を進める。 ◇非開削でトンネル築造  同工事では、東京都八王子市石川町を起点に宇津木町(八王… Read More
  • 【現場最前線】営業線を10本またぐ難工事 首都高横浜環状北線の新子安鉄道交差部 横浜市神奈川区子安台から、JRの横須賀線、東海道本線、京浜東北線と京浜急行本線の直上約12mをまたぎ、緩やかな曲線を描きながら生麦方面に伸びる巨大な橋桁。この施工中の跨線道路橋は、横浜環状道路の北側区間を形成する横浜環状北線の一部で、鉄道営業線10路線に加え国道15号、横浜市道をまたぐ橋桁7本と基礎・橋脚6基を建設する。国内でも類を見ない難工事に挑んでいる鹿島・前田建設・京急建設JVの山崎秀治所長は、「鉄道の運行を阻害せず、そして工期を厳守す… Read More
  • 【現場最前線】600トンのアーチ橋を横移動! 名古屋市の「中川橋」架替え 名古屋市港区の中川運河に架かる「中川橋」の架け替えで、アーチ橋(1930年架橋)を横取り工事を行った=写真。現橋をいったん北(上流)側に約37m移動し、新設した下部工に移し替える(旧位置より河口側へ5mへ移動)もので、2017年の全体完成を予定。移動工事は横河工事が担当している。 6月26日から28日の工事では、垂直方向に反力を取る油圧式スライドジャッキと水平にアームを伸張して横取りする機構を備えた水平ジャッキの2種類を使用した。 施工の手順… Read More
  • 【現場最前線】急峻な地形を縫って進む工事用道路 釜石山田道路 伐採跡が道路のルートになる 東日本大震災からの復興に向けたリーディングプロジェクトとして、異例の早さで整備が進められている三陸沿岸道路の釜石山田道路。このうち、東北地方整備局南三陸国道事務所(柴田吉勝所長)が所管する山間部に位置する大槌・山田地区では、大規模構造物の前段となる土工工事が、地元企業の手で進められている。 急勾配の工事用道路 ◇波板地区道路改良  その1つが、岩手県大槌町で行われている波板地区道路改良工事(施工=佐々… Read More

0 コメント :

コメントを投稿