2014/10/16

【復興特別版】多賀城市の災害公営住宅第1号が竣工 各世代つなぐ環境を提供

宮城県多賀城市が、同市で第1号の災害公営住宅として都市再生機構に委託して建設工事を進めていた「多賀城市営桜木住宅」が竣工、17日に待望の入居式が開かれる。実施設計と施工は鴻池組・橋本店JVで担当した。

 同住宅は、RC造4-6階建ての4棟からなり、総延べ床面積は約1万5210㎡。震災の津波浸水区域に立地するため、1階は駐車場・駐輪場や物置などとし、2階以上に計160戸の住居を配置した。
 2階レベルには各棟を結ぶコミュニティーデッキを設けて災害時の避難動線を確保しているほか、屋上は地域住民の一時避難場所としての機能も持たせている。

また、高齢者や子育て家族など多様な世帯が入居することから、被災前は隣接地で運営していた保育所を敷地内に再建したほか、住棟内に高齢者生活相談所や日常的なふれあいの場である“みんなのリビング”を新設。車いす使用者向け住宅やペット共生住宅も備えるなど、より住みやすい生活環境を提供する。
 同市では桜木住宅と、鶴ケ谷、新田、宮内の計4地区で合計532戸の災害公営住宅整備を計画。このうち都市再生機構に委託して整備する鶴ケ谷と新田地区は9月上旬に着工、宮内地区は調査・設計中となっている。
 鶴ケ谷地区はRC造4-8階建ての4棟あわせて総延べ約2万0880㎡規模。計画戸数は274戸。設計は久米設計で担当。鴻池組・橋本店JVが施工する。
 新田地区は南工区がRC造3階建て2棟・総延べ約2810㎡、北工区が同造3階建て延べ約870㎡。戸数は計48戸となる。設計は日東設計事務所。施工は南工区が鴻池組・斎藤工務店JV、北工区は斎藤工務店が担当する。
 両地区とも高齢者生活相談所や集会所を設け、一時避難場所としての機能も備える。完成は鶴ケ谷地区が2016年2月、新田地区は15年9月を予定している。

◆UR支援の災害住宅/643戸完成引渡し

 都市再生機構が被災自治体から委託または支援要請を受けた災害公営住宅は10月1日現在で66地区、計4367戸。このうち、宮城県では8市町の34地区で計3392戸の整備を支援。これまでに南三陸町の入谷桜沢(42戸)と歌津名足(28戸)、女川町の女川町民陸上競技場跡地(200戸)、塩竃市の伊保石(31戸)の4地区計301戸が完成・引渡し済みとなっている。
 岩手県では7市町村の29地区で計828戸の整備を支援。うち完成・引渡し済みは、大槌町の大ケ口(70戸)、屋敷前(21戸)、大ケ口二丁目(23戸)、釜石市の花露辺(13戸)、大船渡市の宇津野沢(20戸)、赤沢(23戸)、上山(11戸)、平林(11戸)、陸前高田市の下和野(120戸)の9地区計312戸。
 福島県では福島県と新地、桑折両町の3地区147戸を支援、うち新地町の愛宕東地区(30戸)が完成・引渡し済みとなっている。

◆1年以上前倒しで完成/陸前高田市の下和野地区住宅

岩手県陸前高田市の下和野地区に市初の災害公営住宅が完成、1日から入居を開始している。津波浸水エリアにあり、市街地をかさ上げする高田地区区画整理事業区域に含まれるが、かさ上げ盛土の安定性を検証するため、先行的に試験盛土(約6m)した敷地に建設したため、完成を1年以上前倒しすることができた。周辺の市街地整備はこれから本格化するため、復興のシンボルともいえる存在となっている。
 建物は7階建ての北工区と6階建ての南工区にあわせて120戸を設置。1階には店舗や福祉施設などを設けるほか、2階レベルは回廊や共用広場で2つの住棟をつなげている。最上階に設けた集会室は緊急時の一時避難場所ともなる。実施設計と施工は前田建設工業・高惣建設JVが担当した。
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