2014/10/30

【士会連合会】「建築士はどうやって社会の期待に応えるのか」 全国大会ふくしま大会

防災や災害対応に際して、建築士はどうやって社会の期待に応えるのか--。日本建築士会連合会(三井所清典会長)が24、25の両日、福島県郡山市で開いた第57回「建築士会全国大会ふくしま大会」では、この命題について幾度となく議論が重ねられた。初日の24日、式典で来賓あいさつした地元郡山市の品川萬里市長は、会場となったビッグパレットふくしまでも多くの避難者を受け入れたことに触れながら、「県下の公共建築はほとんどが避難場所となったが、われわれが避難することができたのも皆さんの建築技術と建築家精神のたまもの」と語った。その上で「日本は多くの自然災害が発生する。皆さんのお力でわたしたち国民が安心して暮らせる家屋やビルをこれからも建設してもらいたい」と建築士の活躍に期待を込めた。

 地域社会に対して建築士が担うべき役割を討議した、青年委員会・女性委員会・まちづくり委員会の合同セッション「被災からの復興とコミュニティの再生」。この中で、阪神・淡路大震災の復興にも携わった兵庫県建築士会の安田和人氏は、「地域の方には、建築については建築士会に頼れば安心だという思いを持ってもらいたい」としながらも、地域と建築士会がコミュニティーを構築する前提として「まず建築士会の地域会、会員同士が強固なコミュニティーを構築する必要がある」と建築士会自体の連携の必要性を強調した。
 セッションに参加した、岩手県で復興支援に取り組む静岡県建築士会の女性は、「被災地では浸水した市街地のかさ上げが進み、いよいよ住宅再建が始まろうとしているが、被災された方はどんな家を建てたいのか、自分の思いをどうやって誰に伝えればいいのかが分からない」という状況を紹介。建築士や建築士会には専門的な立場からアドバイザーとして被災者に知識と技術を提供し続ける役割があると指摘した。
 被災者でもある福島県建築士会の委員からは、実体験に基づく意見が出された。
 まちづくり委員会で発表した遠藤一善氏は被災した建築が次々に解体されている状況に懸念を示し、「解体工事に助成金が出るため、文化財のように価値ある建築も解体する方向に進んでいる。建築が可哀想だ」と指摘。行政機能を補完していく上でも、建築士が地域にとって価値ある建築の保全に向けた活動により積極的に取り組むことを呼び掛けた。
 セッションを終えて、福島県建築士会の幕田宙晃氏は、震災後の3年間について「復興にはまだ時間がかかるが、われわれは憂いてはいない。逆に、この時代に生まれて良かったとさえ思う」と振り返りながら、「復興に立ちあうことで、新たな気づきも得られた。今後復興に携わり、その記憶を継承することがわれわれの責務だと実感している」と福島の再生に向けた思いを新たにしていた。

■拭えない「福島=原発」のイメージ 長期的に対応する体制が必要

 東日本大震災からの3年間を振り返る催しが数多く行われた。青年委員会、女性委員会、まちづくり委員会による「被災からの復興とコミュニティの再生」をテーマにした初の合同セッションのほか、震災復興のパネル展示、福島第一原子力発電所内やJヴィレッジの現地視察などが行われた。


合同セッションでは、各委員会が震災に関連したこれまでの活動を報告し、今後の連携体制などについてパネルディスカッションした。
 青年委員会は「防災・減災・まちづくり」をテーマに各都道府県の青年委員長を対象に実施したアンケートの結果を報告した。コーディネーターを務めた兵庫県建築士会の安田和人氏は、「震災から3年半が過ぎたが、被災地への風評や誤解がある。被災した方々から正しい情報を共有し、今後の災害に対しての備えとしたい」と述べた。
 アンケートでは、福島県のイメージとして、「復興」や「自然」といった回答もあったが、最も多かったのは「原発」だった。これに対して福島県建築士会の幕田宙晃氏は「福島県は原発・放射能といったイメージが強いため、驚くような回答ではなかった」と冷静に受け止めた上で、「震災の影響は受けたが、魅力的な部分は多い。まずは被災地の現状を知ってもらい、良いイメージを持って福島に遊びに来てほしい」と語った。
 各青年委員会による復興支援の取り組みも報告された。安田氏は事例紹介を踏まえて「震災直後に個々で動くことは重要だが、組織として長期的に対応する体制ができていない。各地の事例を共有し、活動の連携を少しずつ進めていく必要がある」と今後の課題を指摘した。
 女性委員会は「放射線遮蔽住宅」の研究成果を報告した。建材による遮へい効果の違いや住宅の新築・改修における遮へい効果を上げる留意点を説明し、活動成果として作成した冊子『考えよう! 明日を担う子供達のための住まいづくり』を紹介した。
 連合会女性委員長を務める神奈川県建築士会の永井香織氏は「この冊子そのものが風評被害の原因になるのではないかという意見もあった。しかし、原発事故で家族がばらばらになった方が大勢いるため、逆にこの冊子が家族のつながりを取り戻す一助になるのではないかという思いもあった」と述べた。
 福島県建築士会の遠藤一善氏も「安心と安全は違う。数値的に安全であっても安心できるとは限らない。安心できるのであれば、遮へい住宅が広まっても良いのではないか」との見解を示した。
 まちづくり委員会は震災当日から現在に至る福島県内の復興過程を紹介した。熊本県建築士会の豊永信博氏は「地域とのかかわりだけでなく、行政とのかかわりも重要だ。相互に信頼し、お互いが助け合える存在にならなければならない。全国の活動に焦点を当て、防災について考えたい」と語った。
 総括した森崎輝行まちづくり委員長は、「災害時に人が仲良くなり、地域に貢献するのは当然のことだ。住宅再建が本格化していく中、3つの委員会がともに事業に参加し、ノウハウを提供できる環境を整えていきたい」と今後の意気込みを語った。
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