事務所規模ごとのBIMへの取り組み状況 |
◇事務所規模で導入に隔たり
具体的な対応を進めている事務所は全体の39・8%。すでに専門部署を設置し、具体的なプロジェクトにBIMを導入する事務所が大手を中心に増えている。特に、2010年以降に専門部署を立ち上げた事務所が多く、ここ2年で急速に関心が高まっていることが分かる。
所員100人以上の大規模事務所は、複数の担当者が実際のプロジェクトを手掛けているケースが多い。取り組みが進んでいる事務所の中には「基本設計で80-90%、実施設計で60-75%に適用」している事務所もある。
既にBIMに取り組む事務所が挙げた課題で最も多いのが「意匠、構造、設備、積算の互換性」「プロジェクトを通したデータ共有のあり方」など、分野・業種間のやりとりだ。
「現場段階でゼネコン、専門工事業、メーカーが同じBIMソフトを使っていなければ効率的ではない。業界全体の共通データ形式の整備が望まれる」という声に代表されるように、BIMのメリットを最大限に享受するためには、ソフトの互換性、データ連携が課題となる。
データ連携の標準フォーマットとしてIFC(Industry Foundation Classes)が普及を始めているが、連携が十分ではないため、この確立・統一が必要とする意見もある。このほか、「ソフトが発展途上。本格的に取り組むにはまだリスクがある」「熟練した設計スキルを持つ人が、データ入力段階から必要となる」など、コストや使い勝手の課題が挙がった。
◇コスト、人材不足に不安
一方、30人未満の事務所で具体的な対応に取り組む事務所はなく、小規模事務所にとってBIM導入のハードルはまだまだ高いことが明らかとなった。
「現状では必要性がない」という声が多かった、特に大きな課題はコスト。ハード、ソフトといったモノにかかる費用だけでなく「専門スタッフを養成する経済的余裕がない」「有能な人材の不足」など、人的経費も大きな負担となる。今後の普及スピードが不明確な状況下で、先行投資をためらう小規模事務所は多い。
しかし、「講習会には積極的に参加」「対応ソフトはあるが、多くが積極的に取り組む業務ではないため事例がない」など、来るべきときに備えて準備をしている事務所もある。
コストや人材不足といった導入に踏み切るまでのハードルだけでなく、導入後の作業の増加、業務間の連携など、顕在化しているBIMの課題は多い。
「設計や施工のツールを超え、建築のライフサイクルデータベースとしての価値を広く社会と共有できれば、社会がBIMを後押しする」と考える事務所があるように、そのメリットを社会が認める時期が訪れれば、BIMの普及は加速する。先行事務所やソフト会社による開拓は急ピッチで進んでいる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年11月15日12面
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