2012/11/13

【コンテナ建築】40フィートコンテナ使い314室のホテルを4ヵ月で完成

40フィートコンテナをモジュールに採用
復興事業従事者や全国各地から訪れるボランティアなどを対象とした中長期滞在型宿泊施設として、コンテナユニットを活用したホテルが宮城県名取市に開業し、注目されている。『バリュー・ザ・ホテル名取』がそれ。中国製の40フィートコンテナをモジュールに採用することで、ひっ迫する被災地での資材・労務不足の影響を回避しつつ、着工からわずか4カ月という短工期で314室を有するホテルを完成させた。設計を担当した高階澄人建築事務所(東京都渋谷区)の高階澄人所長に話を聞いた。

建設コストは、1個当たりのコンテナ製作・輸送費が50-60万円
国道4号沿いの仙台市境に完成した同ホテル(名取市上余田字千刈田555-1ほか)は、S造2階建て延べ5837㎡の規模。施工は山岸工務店(名古屋市中村区)が担当し、10月1日にオープンした。青とオレンジに塗り分けられたコンテナを2層積み上げた形の宿泊棟はすべてシングルタイプ(1泊2食付き)でユニットバスや冷蔵庫、テレビなどを備え、長期宿泊に対応する。
 より早く安く造るため、当初はプレハブ構造を検討したと言うが、国内メーカーにはホテルの規格に適合するものがなかったため、海外でのユニット生産を選択。「海運用の国際規格に合わせた40フィートコンテナ」をモジュールとした。
 高階氏は、「コンテナを積み上げることが建築として正しいのか悩んだ部分もあるが、建築家という職能で被災地への貢献を考えた結果、復興事業を担う大勢の作業員が低廉で快適に泊まれる宿泊施設を造りたかった」と、その意図を話す。
「バリュー・ザ・ホテル」はすべてシングル対応だ
コンテナの製作は中国のCIMC(チャイナ・インターナショナル・マリン・コンテナズ)が担当。中央の廊下を挟み、1個当たり2室で構成された居室は11・8㎡の空間となる。「コンテナにはもともと柱や梁という概念がなく、建築基準法をクリアするため、製作時に柱や梁を溶接した。中国にはJIS規格の認定工場が少なく、溶接の精度や仕上げには気を使った」とも。
 ユニットバスを含め、備品の多くも中国製を使用したが、国内の耐火基準を満たす「F☆☆☆☆(エフ・フォースター)」のクロスなどの内装材や交換頻度が高い照明器具などは日本で購入して中国に持ち込んだという。
 「労務費や資材は(中国が)圧倒的に安いが、国内の基準に適合した資機材の購入や搬入などにコストがかかった。設計作業の大部分は調査や交渉ごとだったといっても過言ではない」と高階氏。
 「最も苦労した」という構造適合性判定の取得では、「判定機関も常設のコンテナ型建築を判定した経験がないため、自主検査を行い、国や県などさまざまな機関に足を運び、ようやく同等の認証が得られた」と振り返る。
 従来のRC建築の10分の1程度を目指したという建設コストは、1個当たりのコンテナ製作・輸送費が50-60万円。ホテル事業の原価回収期間は通常おおむね20年とされるが、同ホテルは10年以内に設定。「地域が復興を遂げた際には、解体して他の地域に移築することも可能だ」という。
 同ホテルの事業主体は、事業ファンドの「合同会社東北早期復興支援ファンド1号」。同ファンドに出資し、ホテルの運営も担う価値開発(東京都千代田区)は、宮城県石巻市に82室、福島県広野町には275室の同様のコンテナモジュールなどを採用した「バリュー・ザ・ホテル」を来年2月に開業させるなど、被災3県でホテル事業を展開していく方針だ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年11月13日6面

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