超高層ビルのような橋脚を建設する |
武庫川橋は、二級河川武庫川や県道を跨ぐ長さ442・2m。工事では橋脚4基の下部工と5径間のコンクリート橋を建設する。両端の橋台は前後の工区で整備する。11年4月に実施設計を含む上下部工一体で三井住友建設が受注し、同年6月に現地に乗り込んだ。近隣向けに工事説明会などを開き、同年11月から工事を始めた。
建設が進むP2橋脚 |
工事の最大の特徴は、SPER工法やバタフライウェブ橋など新技術を駆使したプレキャストコンクリート部材の活用だ。4本の橋脚、上部工のウェブ(腹板)、柱頭部の一部にプレキャスト部材を使う。使用するコンクリート量のうち、プレキャスト部材の比率は11-12%に達する。「一般的なコンクリート橋梁に比べてかなり高い比率になる」(嶋田所長)という。
円形の橋脚には初適用となるSPER工法は、鉛直方向に伸びる鉄筋に、帯鉄筋を埋め込んだ半円形のプレキャスト部材をクレーンで吊り、はめ込む。部材は高さ2m、直径が5-5・5mで、内部は空洞になっている。これを3段積み上げ、コンクリートを打って一体化する。同社の能登川PC工場(滋賀県東近江市)で製造し、夜10時ごろに出発、早朝現場に到着する。3段分(高さ6m)の1サイクルの工程を6日間で施工している。通常の倍の早さで施工できるほか、高所作業が減り、安全性が高まる。工場で製造するため、品質が安定し、型枠の使用が減るので環境にも優しい。
山間部に橋脚が伸びる |
現状は2基の橋脚が先行し、急ピッチで工事が進んでいる。武庫川の河川内に建てる橋脚は、基礎部を含む高さ18mまでを渇水期に施工し、それより上の部分は仮桟橋から建設する。残りの橋脚1基は今秋から基礎部に取りかかる。
下部工の施工を進め、13年4月ごろから上部工の建設に着手する。柱頭部から主桁の左右バランスをとりながら架設する張出し工法を採用する。上部工は、西日本高速道路会社と三井住友建設が共同開発したバタフライウェブ橋を採用する。コンクリート箱桁橋のウェブに、プレキャスト部材の蝶型の形状をした薄型パネルを使う。高強度コンクリートを使い、厚さ15cmの薄さを実現、重量は通常のコンクリートウェブに比べて1割低減し、主桁の軽量化につなげた。
◇揚重作業への安全対策
安全対策で重視しているのは、「揚重作業が続くことから指差呼称を求めている。繰り返し作業が多いため、どうしても慣れが出てくる。指差呼称の徹底でヒューマンエラーを防ぎたい」(嶋田所長)。暑さの厳しかった今夏は、冷房に霧の出るファンの設置やスポーツドリンクの支給など熱中症対策にも注力した。近隣対応では、資機材の運搬が多いため、工事車両の交通ルールの順守を重視し、周辺環境に配慮している。
今回の工事では積極的にプレキャスト部材を活用した。工場で製作することから工期短縮には有効だが、資材費は現場打ちのコンクリートより高くなるため、工期短縮によるコスト削減効果も踏まえた「バランス感覚が問われる。現場条件によっても違いが大きく、新技術を使いながら試行錯誤の部分もある」と話す。今回得た貴重な経験は、工期の短縮化が強く求められる東日本大震災の復興事業でも生かしていきたい考えだ。
工事の完成は14年11月を予定している。残り工期は約2年。工事は来夏から14年にかけてピークを迎える。嶋田所長は「これまで同様に、作業所全員で知恵を出し合って乗り越えていきたい」とゴールを見据えている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月31日16面
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