館林の新たなシンボル「製粉ミュージアム」 |
◇設計メモ 歴史と今、未来つなぐ空間・機能を追求
情報発信・体験機能を担う新館 |
再利用した煉瓦は旧東京駅等に使用された日本煉瓦製造製(現深谷市 刻印は上敷免)のレンガです。上部の木造部分は免震構造とすることで既存外壁の補強のみとし、内部の間仕切りを含めた意匠をそのまま使用することを可能にしました。
免震リニューアルは公的に性能評価を受けたうえで館林市の耐震改修計画認定を取得しました。補強後の建物の構造性能を精査する目的で補強外壁を模擬した実大試験体による確認実験も行っています。その他小屋組補強、床組の補強および展示物の転倒防止にも配慮、あわせてバリアフリー対応を行うことで「安心で安全で使いやすいミュージアム」に生まれ変わることを目指しました。
新館は小麦の製粉の昔と今、そして未来を知って、楽しく感じていただく情報発信のための施設であり、庭を望むホワイエ、映像展示や団体向けのオリエンテーションなどのできるプレゼンテーションルーム、メインの展示室や半地下の収蔵展示室等で構成しています。建築的にはあくまで歴史的建物である本館と日本庭園を主に考え、新館のデザインには謙虚ではあるけれども、凛として静かに佇んでいるような建築を意図しました。ゆったりできる建築を目指し、外壁のレンガタイルや内部の木の自然な素材感を生かしたシンプルな空間としています。
既存の日本庭園は、正田英三郎氏が斉藤勝男氏を信頼され、設計をまかされたものでした。英三郎氏は、庭園は謙譲という心の美しさの具現化であり、住まう人と密接な関係を持つもので、人格形成、一国精神的文化にまで影響するものととらえていらしたようです。
また、既存庭園を三光の庭と称し、四個の石臼を配されていました。氏の本庭園に対する深い思いが感じられます。今回の庭園の拡張設計に当たり、既存の2本の桜の木も生かしながら、ホワイエの近景の枯山水に石臼を配し、アンジュレーションのある芝生の回遊庭園を木立で囲い、歴史と今と未来を繋ぐおおらかな庭を意図しました。
(清水建設株式会社 設計本部 教育・文化施設設計部 鈴木健夫、集合住宅・寺社設計部 関雅也)
◇施工メモ 密度の濃い建物を一丸で具現化
展示室 |
半地下の収蔵展示室 |
重量の軽い木造建築に免震装置が正常に機能するよう、既設レンガ基礎の下部にRC造の人工地盤を新設。上部建物を約20m移動させる曳屋工事では、移動中の建物の構造モデルを作成し、レールの配置を慎重に検討しました。
内部 |
安全管理では工場内での工事であることから、資材等の搬入・搬出車両による交通災害に細心の注意を払い、現場内では作業員一人ひとりの安全意識を高めることを基本として安全活動を推進し、無事故・無災害で竣工をむかえることができました。
この意義深いプロジェクトに参画できたことに大きな達成感を感じるとともに、今後はこの建物が、館林市の新たな地域のシンボルとして、多くの人に末永く愛されることを願っています。
最後になりますが、日清製粉グループ本社様をはじめ、建設に携わった皆様方のご支援、ご協力に厚く感謝申し上げます。
(清水建設株式会社 関東支店 群馬営業所 南雲勝人)
◇工事概要
庭を望むホワイエ |
▽工事場所=群馬県館林市栄町6-1
▽施主=株式会社日清製粉グループ本社
▽設計・監理=清水建設株式会社一級建築士事務所
凸版印刷株式会社・株式会社トータルメディア開発研究所(展示)
▽施工=清水建設株式会社関東支店
凸版印刷株式会社・株式会社トータルメディア開発研究所(展示)
▽敷地面積=4,891㎡
▽建築面積=134.53㎡(本館)、941.52㎡(新館)
▽延べ床面積=257.98㎡(本館)、1,271.69㎡(新館)
▽構造=木造・免震構造・S造(本館)、RC・S造(新館)
▽階数=地上2階(本館)、地上3階(新館)
▽工期=2011年6月14日-2012年5月31日
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年11月12日7面
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