15のコード体系を提供するOmniClass |
2次元の図面では人間が必要な情報を読み取らなければならないのに対し、BIMでは建築の構成要素(オブジェクト)の情報にダイレクトにアクセスすることが可能となる。平面図と建具表の両方を調べなくとも、窓に使われているガラスのサイズや枚数、種類などの情報をすぐに引き出すことができる。とはいえ、ある設計者は「窓」と入力して、別の設計者は「外部建具」と入力していれば、正しい解は得られない。このようなミスを避けるためには、BIMモデルのオブジェクトにそのものを特定することのできる固有のコードを振ることが必要である。コードはプロジェクト独自に定めるのではなく、一般的に普及している分類ルール(コード体系)を使用すれば、さらに判断に迷うことはなくなるであろう。
これまで、米国やカナダでは、米国建設仕様書協会とカナダ建設仕様書協会の制定したコード体系が広く普及し、公共発注機関だけでなく民間工事でも使用されてきた。工事の仕様書は、工種別分類のMasterFormatに基づき作成される。また、設計時点でのコスト管理では、壁や床といった部位別分類のUniFormatが利用される。コード体系という言葉は聞き慣れないかもしれないが、日本でも仕様書に公共建築工事標準仕様書の章節の番号を記載しているであろう。そのようなものを想像してもらえばよい。
◇入力自動化し施設“見える化"
建築のライフサイクルを通してBIMモデルを汎用的に使おうとすると工種別分類と部位別分類だけでは不足する。そこですべての事象を網羅すべく開発されたのがOmniClass(omni=総)である。OmniClassにはオフィス、倉庫などの空間の機能を示すものや、窓枠、壁紙といった製品を示すものなど用途別に15のコード体系が提供されている。OmniClassのコード番号をモデル作成時に入力していれば、後でどのような場合においても、データを的確に引き出すことができるのである。
工事の完成時に引き渡す機器リスト、マニュアル、保証書などの資料は膨大なものとなる。世の東西を問わず、人目につかない倉庫にしまわれるのが常で、担当が替わると必要な情報を即座に見つけ出すことが困難となる。そこで維持管理に必要なデータを定義して、COBieと呼ばれるフォーマットが開発された。COBieを使えば、BIMモデルから施設管理システム(CMMS)や運転制御システム(BAS)へのデータの入力が自動化されるほか、これらのシステムを連携させ、施設の状態を見える化することも可能となる。
BIMモデルにOmniClassのコードを割り当てたり、COBieフォーマットを意識してデータを入力するなど、ちょっと一手間加えることで、データがいっそう恵みをもたらすものとなるのである。
(内閣府沖縄総合事務局開発建設部営繕課長 大槻泰士)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年10月31日16面
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