2012/11/17

【続報!】最優秀のザハ案・躍動感ある流線型が評価 新国立競技場国際コンペ審査講評

ザハ案
日本スポーツ振興センターが実施した新国立競技場の基本構想国際デザイン・コンクールで審査委員長を務めた安藤忠雄氏は、最優秀賞のザハ・ハディド アーキテクト(英国、代表者・ザハ・ハディド氏)の案について、「スポーツに一番重要な躍動感を思わせる流線形のデザインが斬新」と絶賛。シンボリックな形態だが、構造と内部の空間表現に見事な一致があり、都市空間とのつながりにおいても、シンプルで力強いアイデアが示されていると評価した。

◇世界に建築・環境技術アピール

 審査講評では、「可動屋根も実現可能で、文化利用時には『祝祭性』に富んだ空間演出が可能。とりわけ、大胆な建築構造がそのまま表れたダイナミックなアリーナ空間の高揚感、臨場感、一体感は際立っており、この強靱な論理に裏付けされた圧倒的な造形性が最大のアピールポイントだった」とした。
 また、「橋梁ともいうべき象徴的なアーチ状主架構の実現には、現代日本の建設技術の粋を尽くさなければならない挑戦になる」とし、自然採光・自然換気・太陽光発電・地中熱利用・中水利用・雨水利用のクーリングシステムなどの提案に対しても「日本の優れた環境技術が十分生かされるだろう」との見解を示した。
 アプローチを含めた周辺環境との関係は現況に即して修正が必要と指摘しているが、強いインパクトをもって世界に日本の先進性を発信し、優れた建築・環境技術をアピールできるデザインである点を高く評価した。
 安藤氏は15日の選考結果の会見で、新競技場には単純な施設拡充以上の社会に対するメッセージや新しい時代のシンボルとなるべき想像力が求められているとの考えを示し、低滞する社会状況を打破する意味でも、「この建築を国家プロジェクトとしてつくり上げることで、日本が技術力などを含めてすごい国だということを世界に発信したい」と強調した。
コックス案
優秀案のコックス・アーキテクチャーピーティーワイ エルティディ(オーストラリア、代表者・アラステル・レイ・リチャードソン氏)の作品は、透明で繊細な3次曲面のドームと内部に浮かび上がる木壁のスタンドが特徴で、その品格を備えた静謐(ひつ)なデザインが好評を得た。スタンドは機能性・実現性が高く、臨場感にあふれたものとなっており、屋上庭園を含めた魅力的なホスピタリティも高く評価された。しかし、透明度の高い普遍的形状のドームは、洗練された印象を与える一方で、スポーツの聖地である競技場としての祝祭的な高揚感や強いメッセージ性に欠ける印象があり、最優秀賞には及ばなかったとした。
SANAA案
SANAA事務所+日建設計(日本、代表者・妹島和世氏)の作品は、環境に呼応したなだらかな起伏のある屋根と観客席が、「これまでにない開かれた競技場のイメージを提示している」と評価。周辺環境や自然との親和性にも富んでおり、環境の時代の新しい建築のあり方を示しているとした。斬新な空間イメージが高い評価を得た一方で、曲面をなす屋根のメンテナンス性を考慮した仕上材やその支持方法、可動屋根や可動遮音壁の実現性、起伏ある屋根とスタンドの隙間が観客の集中力を妨げることなど、美しいパースのイメージを保ちながら、現実的課題をクリアすることに懸念があり、入選案になったとした。
 今回のコンペには、国内外から46点(国内12、海外34)の応募があった。1次審査では作品の匿名性を確保した上で、日本人審査員8人から推薦があった作品について、デザイン性、機能性、実現性などの観点から検討を行い、国内の設計事務所からの応募4作品を含む11点を選定した。
 2次審査では、グローバルな知見を求め、世界的建築家のノーマン・フォスターとリチャード・ロジャースの両氏を審査員に加え、計10人で投票を行い、その上位作品について、未来を示すデザイン性、技術的なチャレンジ、スポーツイベントの際の臨場感、施設建設の実現性などの視点から審査した。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年11月19日4面

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