2012/11/22

【復興】重量鉄骨ラーメンの「動かせる建築」 サトコウのSSUT工法

建設中の釜石復興ビル
重量鉄骨ラーメン構造のユニット工法、「SSUT(サット)工法」のサトコウ(本社・新潟県上越市、佐藤憲二社長)は、オリックスが岩手、宮城両県の沿岸部で建設を計画している複数の宿泊施設の設計施工を受注、1棟目となる釜石復興ビルを完成させた。本設でありながら移築や解体が容易なため、スピーディーな土地活用が求められる首都圏で引き合いが高まっていた同工法だが、資材・労務の不足問題を抱えながら早期供用が至上命題となっている被災地の復興需要にも即応できる技術として注目を集めている。
 釜石復興ビルは岩手県釜石市只越町に建設された。6階建て延べ1899㎡規模、70室の客室を持つビジネスホテルで、防災用備蓄庫や屋上には避難スペースを設け、避難ビルとしての役割も担う。
 使用した63台のユニット(幅3m、高さ3m、長さ10m)は7月から新潟県上越市の工場で製作を開始、直江津港から船で搬送した。現地では6月から基礎工に着工。9月中旬から建て方に着手し、10月末に竣工した。オリックスは今後両県で10棟(約1400室)の建設を予定しており、近く仙台市で2棟目に着手する。

◇建物の85%を工場製作

 SSUT工法は厚さ6-12mmのコラムで構成したユニットを電気、設備、内外装の仕上げまで工場製作し、現場に搬送した後、積み重ねる。建物の85%以上を工場製作することで天候などに左右されずに高い品質を確保しながら、大幅な工期短縮を実現できることが最大の特徴だ。8階建てまで建設可能で、現場ではRC造などと比べて作業員数も大幅に抑えることができる。
 ユニット間はハイテンションボルトで結合。柱と梁は二重構造となるため耐震性もアップする。全体工期は在来工法の3分の1から2分の1に短縮することが可能だ。解体、リニューアル、移築も容易で、移築コストは新築時の半額以下という。
 佐藤社長によると同工法を開発したのは16年前。鋼材販売や鉄骨鉄筋加工、空調衛生工事などを手掛けてきたが、建設市場の急激な縮小で価格競争が激化したことを受け、下請け脱却に向けて考え出したのが同工法による元請け体制へのシフトだった。
 沖縄など離島での需要に加え、介護施設や土地利用の回転率が早い首都圏でアパートなどの引き合いが徐々に増加。これまでにアパート、ホテルなど40-50棟を施工した。最近では大手電機メーカーからユニット型のデータセンターも受注。「動く建築」の多用途展開の可能性も開けてきたと手応えを話す。

◇代理店施工も

 平均すると年々1億円ずつ売り上げが伸び、現在は10数億円に達し、総売上の15%程度まで成長したという。「重量鉄骨ラーメン構造のユニット工法を設計・加工・施工まで一貫して手掛けているのは当社だけ。『早く安く』だけでなく、Hグレード認定を取得した自社工場による製作で高品質かつ耐震性にも優れているという強みを生かし、あと5年くらいで売上げ倍増を達成していくのが当面の目標」と見据える。
 東北でのオリックスの宿泊施設建設はこれからが本番。量産体制とともに将来のメンテナンスもにらんだ施工代理店方式などの体制整備も課題となってきた。「基礎工事や近隣調整などの面で地域のゼネコンの方々との連携が不可欠。ぜひ協力を求めたい」と展望する。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年11月22日 6面

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