2012/11/24

【連載・GSAのBIMマネジメント(最終回)】BIMには“見える化"する力

National BIM スタンダードの構成図
BIMは、これまでの建設業界の仕組みに変革を求めるテクノロジーである。BIMには3Dによる設計内容の可視化、建築と設備の干渉チェック、コスト検証、コラボレーション向上、フロントローディング(業務前倒し)、ファストトラック(作業工程の迅速化)などのさまざまな効果があるが、旧来の制度のまま導入しようとするとたちまち限界にぶつかる。「協力体制が不明瞭」「コストが不透明」「基準・ルールが未整備」の3つの壁である。
 協力体制についてすぐにもできることは、第4回(9月26日付)で紹介した「BIM実施計画」を作成して役割分担を決めることである。LOD(設計レベル)まで決めれば、図面の精度が低いため施工段階で1からモデルを作り直す羽目に陥ることは避けられるであろう。それでも設計・施工分離方式では、系統図のみの設備設計図では設計段階の干渉チェックが十分にできないなどの根本的な問題は残る。その解決を図るためには、第6・7回(10月10日、17日号)で紹介したとおり契約方式の見直しが必要になる。
 BIMで数多くの選択肢をスピーディに検討できるようになり、数量の算出が自動化されるようになったとしても、コストが不透明であれば発注者は正しい判断が下せない。さらに日本の総価契約方式では、縮減したコストを分配することによりインセンティブを与える効果が働きにくい。コストが透明化されるためには、コストとフィーを切り分け開示する(オープンブック)ことで、適正な市場価格が醸成されることが必要である。

◇建設産業の仕組みも透明化必要

 BIMモデルの作成ルールは、ベンダーやユーザーグループの活躍により整備されつつあるが、属性情報のルールは日本に存在しない。米国建築科学学会はことし5月に『ナショナルBIMスタンダード』第2版をリリースした。これまで紹介したBIM実施計画、OmniClass、COBieなどが採用されている。ナショナルという名称ながら、英国、カナダ、オーストラリア、韓国など6カ国と協力し、オリジナル部分を追加すれば他国でも利用できるものとなっている。一品生産の非住宅建築は水平分業モデルであり、さらに、属性情報は建物のライフサイクルを通して使われ続けるものである。誰もが永続的に使用できる普遍的なオープンスタンダードの構築が日本でも一刻も早く望まれる。
 日本の建設産業のよさは、仕事が丁寧で、設計と施工のチームワークが取れ、工期が順守されるところにあろう。ところが、経済が右肩下がりになり、世界市場から淘汰されるようになると、日本独自のニーズや商慣習はガラパゴスと呼ばれるようになった。BIMは単なるツールであるが、デザインだけでなく、工程もコストもすべてを見える化する力を持っている。この閉塞感を打破するために本当に必要なのは、BIMの導入と合わせて、建設産業の仕組みも見える化して透明化することではないだろうか。 (おわり)
(内閣府沖縄総合事務局開発建設部営繕課長 大槻泰士
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年11月7日14面

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