2013/06/21

【現場最前線】「はやぶさ自転車」で地域密着型の線量調査 大林組JVが一関で

子どもたちが道路を走る特殊な自転車を指さす。「あっ、はやぶさだ」--。大林組JVが岩手県一関市で“地域密着型"の放射線量調査業務を進めている。エメラルドグリーンの車体にピンクのラインが入った三輪自転車は、東北新幹線の車両「はやぶさ」をイメージした。もくろみ通り子ども受けがいい。自転車の荷台部分には特殊な測定器や運行管理システムなどを搭載し、ゆっくりと走行しながら効率よく高精度に道路の放射線量を測定する。
 一関市による放射線量低減対策事前調査は、西地域と東地域で発注し、2つとも大林組JVが受注した。JV構成員は西が平野組、東は小山建設と地元企業が参画している。調査対象は市道延べ3700㎞に加え、住宅や事業所などの敷地も含む。このほか住民説明会の支援、住宅敷地の調査結果の発送業務などもJVが担う。


後続車がモニター
◇GPS搭載の三輪自転車

 道路の線量調査はこれまで、徒歩で30mごとに測定していたものの、調査対象が3700㎞ともなると効率が悪い。そこで新開発したのが、高精度な測定器やGPS(全地球測位システム)などで構成する「オリオン・スキャンプロット」を搭載した自転車だ。一関市での業務には、三輪自転車タイプに加え、バイクタイプも投入した。
 オリオン・スキャンプロットは英国の原子力関連企業が開発した放射線量測定技術で、大林組が独占契約を結んでいる。福島県内の線量調査では、機器をリュックサックで背負うバックパックタイプのほか、車両に搭載して適用した実績もある。
 自転車の速度は時速10-20㎞程度で、走りながら1秒ごとに計測する。道路の線量測定は30m間隔で行うのが一般的だが、この自転車を使えば約3-5m間隔ときめ細かな計測が可能となる。後続車両の車内では、モニター上の地図にリアルタイムに計測結果が表示されていく。この運行管理システムは、同市内の一測設計と共同開発した。

◇被爆も軽減

 「道路の線量測定が大幅に効率化でき、高い精度を実現した。一関市の線量は高くないが、線量の高い地域では作業員の被ばくも軽減できる」(大林組)。6月中にはすべての調査を終え、報告書などの作成に入る予定だ。
 同市の業務では、路面から高さ100cm部分の線量を計測、通学路など一部では高さ50cmの計測も求められた。このため2つの高さを同時に測定できるバイクタイプも開発済み。今後、他地域の線量調査などで導入する見通しだ。
 東西両地域で所長を務める大林組の藤原宗一氏はもともとダム工事が専門で、県内のダム工事現場に長く携わっていたため一関には地の利がある。今回の取材では、自らバイクにまたがって報道陣に付きそう添う行動派な一面ものぞかせた。

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