2013/06/15

【現場最前線】箱桁80mを送り出し! NEXCO東日本の外環東側区間・新葛飾橋工事

2015年度の開通を目指し工事が進む東京外かく環状道路東側区間。現在、三郷南インターチェンジ(IC)から千葉県市川市の東関東自動車道高谷までの長さ15.5㎞区間で工事が進む。このうち東日本高速道路が担当するさいたま工事事務所の施工区間は三郷南IC~江戸川左岸(千葉県)の約3.5㎞すべてが高架橋となる。特に千葉県側から約950m区間となる新葛飾橋(鋼上部工)工事は、関係機関との調整が輻輳(ふくそう)するほか、連続桁を送り出す難易度の高い施工区間となっている。


◇約50機関と調整作業



この工事区間は国道上部や河川部での工事となる。「埼玉県と東京都、千葉県の3都県にまたがるほか、江戸川を渡河するため関係機関との調整に時間を要した」と東日本高速道路関東支社さいたま工事事務所の本間淳史所長は語る。その数も約50機関近くと他の工事区に比べてかなり多い。
 河川部では渇水期(11月-5月)の施工となるため江戸川に長さ506mのうち290mを7カ月で構築するという短工期となった。施工は横河ブリッジ・JFEエンジニアリングJVが担当。河川上空では両脇に国道があり、また河川上部を通すことから「連続箱桁送り出し架設」を採用、手延べ機を取り付けて組み立てた橋桁を橋軸方向へ次の橋脚まで約80m送り出した。

◇たわむ箱桁、ジャッキで修正


通常は、送り出すにつれて手延べ部が下方にたわんでしまうため、大型クレーンでつり上げたりするが、今回は河川上部ということもあり、到達直前に手延べ部に取り付けられているジャッキを使って先端部の角度を調整、微妙なバランスを取りながら仮受けローラーに乗せたという。「実験ではうまくいっていたものの、現場では初の試み。万が一の備えはしていたが、狂いもなく完遂することができた」と施工者の末澤寛横河JV所長は話す。工期と安全を考え上下4車線分を3主桁一括送り出しで実施した。
 河川上部架設工事のクライマックスとなる千葉県側の交差点部を施工したのは4月中旬、夜間通行止めにして挑んだ。「交通規制も含めて約8時間、時間との闘いの中で、最後の100mを完遂させた。関係する協議機関が非常に多く工事の進捗に合わせた協議が欠かせなかった」と、同さいたま工事事務所の服部浩彦葛飾工事長は振り返る。

◇月の半分は夜間工事


陸上部では車線規制が伴うため月の半分以上が夜間工事となり、現場は騒音・振動対策に細心の注意を払う。末澤所長は、「ボルト一つを締めるにも音が発生する。特に夜間は、音が響きやすく交通規制の時間的な制約の中、壊れ物を扱う気持ちで作業を行っている」と語る。常時70人の作業員が従事する現場では、近隣対策はもちろん安全確保のために朝礼、夕礼は欠かせない。「作業が24時間体制となることから、入念な打ち合わせとコミュニケーションが不可欠」といい、一人ひとりの顔を毎日確認しながら現場に送り出している。
 高速道路は日本経済にとって重要なインフラだ。「100年先まで利用されるために、美しく、丈夫で長持ちする構造物に仕上げたい」と外環整備に対する本間所長の思いは強い。国道に挟まれた中での工事は昼夜にわたって周辺道路で多くの規制や夜間通行止めを強いるため生活道路に影響を及ぼす。

◇みんなに見てもらいたい

 現場運営で周辺住民の理解に感謝しているという思いから「地域の住民や子どもたちにも現場を見てもらいたい」と服部工事長。地元自治会の夏祭りの際など、夏休みに親子で現場を見学するイベントを考えている。「近隣住民とコミュニケーションを図りながら、感謝する気持ちを忘れずに恥ずかしくない現場監督として地域とともにしっかりやっていきたい」と熱く語る。
 工事は、15年度の開通に向けて急ピッチで進む。今後は東金町高架橋での作業となるがヤードが狭いため送り出し架設工法での施工が控えている。江戸川が渇水期に入る11月からは、河川上部工との並行施工に着手する。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年6月12日

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