「新たな道を切り開くために、意欲的な同志が集まっている」とは、生コンメーカーの若手経営者らで構成するGNN(元気な生コンネットワーク)の発足を呼び掛けた長岡生コンクリート(静岡県伊豆の国市)の宮本充也専務だ。セメントメーカーに依存しない自立的な会社経営を模索する中で、互いの特殊技術を共有し合うネットワーク化にたどり着いた。GNNの発足から2年が経過し、加盟数も45社まで拡大した。
◇未来が見えない閉塞感打ち破る
復興需要で一時的に供給がタイトになっているとはいえ、生コン業界は公共事業の削減に伴う市況低迷のあおりを受けてきた。業者数はピーク時の4割減となる3500社まで落ち込んだ。地域で活動する生コン各社へのしわ寄せは年々激しさを増している。現在34歳の宮本氏はこう考えていた。「われわれ若手経営者が60歳になった時、今のままではハッピー・リタイアできない。この閉塞感を打ち破りたい」。そうした思いは全国各地に点在していた。
◇低炭素型コンクリート
発足時のメンバーでもあった三和建業(埼玉県朝霞市)の野島安広専務も同じ思いを抱いていた。生き残りをかけて独自に低炭素型コンクリートを手掛けてきた。「各社と情報を共有する中で、他のエリアでも同じような取り組みをしている動きがあった。GNNの仲間には技術をオープンにして関心のあるところとは積極的に手を結ぶようにしている」
独自開発した高流動埋戻し材『スラモル』を提供している金子コンクリート(横浜市)は、GNNへの加盟をきっかけに同業他社とアライアンスを結び、販売網の拡大に乗り出している。金子敬祐取締役は「敷地に限定的な都市部では埋め戻しの需要があり、関東周辺のメンバー5社から賛同を得た。現在は年間1万2000m3を提供している」と説明する。
◇発言力も高まる
「このように個別で奮闘してきた点が結びつき、面として広がっている」と、GNN発起人の宮本氏自身も具体的に手応えを感じている一人だ。海外企業との連携を模索してきた長岡生コンクリートでは、イタリアの混和剤メーカーと提携して戻しコン再利用システムを開発したほか、カナダの企業とは運搬中の生コン状態を把握できるシステムの提供を始めている。GNN加盟の6社が賛同し、現時点で12台のミキサー車にシステムが導入された。
「良くも悪くも生コン業界は縦割り意識が強く、新しい試みは普及しにくい。GNNは同じ思いを持った仲間が集う“公園"のような場所。その中では協力相手を募ったり、意見を求めたり、自由な発想で活動できる。任意組織ではあるが、ある程度の規模が集まれば、業界内への発言力も増すだろう」と、宮本氏は意欲的だ。
現在の目標は、2013年度末までに175社の加盟を確保することだ。全国の工場の約5%を目安にしている。「GNNメンバーが全国の地域にバランス良く配置できれば、ゼネコンとのタイアップの道も生まれる」。関東、中部、北陸は加盟数が増えているが、その他ではまだ加盟会社がいないエリアも多い。
GNNは、4月末に東京都内で開かれた全国生コンクリート工業組合連合会と同協同組合連合会の生コン技術大会にブースを設置した。2日間で120人強の立ち寄りがあり、その中から3社の新規入会があった。「公園には徐々に人が集まっている」。問い合わせは、GNN事務局・電話055-947-0049。
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加盟企業は次のとおり。カッコ内は都道府県。
〈秋田〉能代中央生コン〈山形〉安藤組〈茨城〉廣瀬建材〈群馬〉白砂生コン、モトキ建材〈埼玉〉三和建業〈千葉〉佐倉エスオーシー〈東京〉トウザキ、大沢生コン、豊田商店、東インド会社、東京テクノ、神山生コン、河島コンクリート工業、戸越建材〈神奈川〉金子コンクリート、東伸興産、森島建興、港北菱光コンクリート工業、宮松エズオーシー、三和石産、依田儀一商店〈長野〉諏訪アサノ生コン、炭平コーポレーション〈静岡〉野村マテリアルプロダクツ、長岡生コンクリート、二葉建設、大東コンクリートヒダ興業、セイエン商事、イワタ、富士宇部〈愛知〉伊藤商店〈岐阜〉レミックマルハチ〈石川〉金沢生コンクリート〈富山〉あづまコンクリート工業〈福井〉福井宇部生コンクリート〈京都〉山崎工業〈大阪〉寝屋川コンクリート、岡本生コンクリート〈和歌山〉大東コンクリート〈兵庫〉大開産業〈島根〉ヒカワ共立生コン、森島建設〈福岡〉野方菱光〈大分〉大分綜合建設
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年5月29日
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