2012/06/07

350年ぶりに木造で江戸城再建へ 「目指す会」が今年度から準備

江戸城の南東面イメージ
(復元設計広島大学大学院三浦正幸研究室、
CG制作エス社、
提供認定NPO法人江戸城再建を目指す会)
 世界が驚く日本の伝統、文化のシンボルを--。焼失から350年の時を経て、伝統的な建設技術の粋を集めた大規模木造建築を再建する運動が盛り上がりをみせている。実現すれば、国内はもちろん、海外から観光客を呼び込むための起爆剤となることが期待される。認定NPO法人江戸城再建を目指す会の小竹直隆理事長は「20世紀前半は武力、後半は金力、そして21世紀は魅力の時代」と、江戸城が新しい国づくりの起点になると期待を込める。目指す会は今年度から、築城に向けた本格的な準備体制に入る。

現存する台座の石垣
 江戸城は、1657年の明暦の大火により天守を含めた多くを焼失した。再建計画は幾度となく持ち上がったものの、台座となる石垣が加賀藩の前田家によって再構築されただけで、天守は350年にわたって不在となっている。

◇超大型の木造建築

 JTBでの海外勤務を経て、東京観光財団(TCVB)の初代専務理事を務めた江戸城再建を目指す会の小竹理事長は「海外に行くと各国のお国自慢を聞かされるが、日本人は海外の人にお国自慢ができない。失いつつある夢や誇りを取り戻し、日本人のアイデンティティーを回復したい」と思いを込める。
 目指す会は「世界に類をみない伝統と文化を持つ国のシンボルをつくる」(小竹理事長)ことを出発点に、04年末に任意団体として設立され、06年にNPO法人化、11年に国税庁から「認定NPO法人」に認められるなど、着実に歩みを進めてきた。
 ことし2月に開いた総会では、実現までのロードマップが示され、再建運動は具体化に向けて本格的に動き出した。
 江戸城再建に当たって、構造は木造とすることが決まった。適切に修復すれば長期間にわたって使い続けることができる。天守の高さは約45mで、石垣を含めると59mとなる。現存する木造城郭建築の中で最大の姫路城と比べ、1階の床面積は2・5倍以上、同高さ1・5倍、全体体積は3・5倍の超大型木造建築だ。

◇規制、費用に課題

 現存する唯一の設計図「建地割図」をもとに立面、断面の復元図を作成した三浦正幸広島大大学院教授は「木造で再建できれば、外国から日本への尊敬が高まるはず。大規模木造建築には、それだけの威力がある」と力を込める。
 再建するためのポイントの1つはヒノキの通し柱。2階から3階には60cm角、長さ15mの通し柱が13本使われる。直径1m、樹齢にすると500-1000年のヒノキが必要だ。それほどのヒノキの巨木を調達することは困難に思えるが「節があっても構わなければ、確保することは可能」(三浦教授)とみられる。
 また、大型木造建築は、特に耐火性能の観点から建築基準法の規制により建てにくい状況にある。いまのところ、具体的な解決策は見出せていないが「法律や建築構造的な問題について、第三者機関に諮問することを考えている」(小竹理事長)。客観的に建設可能であることを認めてもらうことで、具体化のための第一歩を踏みだそうとしている。
 もう一つの大きな課題は、建設費。いまのところどれだけの費用がかかるか算出はしていないが、「RC造であれば300億-400億円前後」(小竹理事長)とみている。木造とするため、この数字よりは大きくなる。また、台座の石垣は現在、皇居の東御苑内にあり、建築物の建設に当たっては一般的な場所よりもハードルは高くなることが考えられる。

◇実現へ活動強化

 目指す会が目標とする完成時期は、東京が候補地の一つとなっている五輪の開催に合わせ、2020年を予定している。小竹理事長は「五輪の開催地が東京に決まれば、都市が大きく動く。東京全体が沸き上がる」と再建の追い風に期待する。
 目標に向けて、12年度から一般向けの広報活動を強化する。さらに「何の資金的、政治的バックアップもないまま、いつまでも“目指す会"と言い続けるわけにはいかない」(小竹理事長)という観点から、13年をめどに、再建を目指す会から再建する会へ移行する予定だ。
 すでに会員は2500人を超え、期待感は高まっている。超えなければならないハードルは高いが、専門家の知恵を借りながら実現に向かう。

『江戸城を歩く(ヴィジュアル版)』 AmazonLink

Related Posts:

  • 【JSCA東北構造デザインコン】最優秀は佐藤圭輔氏らの「KOKERASUの森林浴」(実務者の部) 日本建築構造技術者協会東北支部(JSCA東北、加藤重信支部長)は27日、仙台市青葉区のアエルでJSCA東北構造デザインコンテストを開いた。実務者の部は佐藤圭輔氏ら5人(いずれも構造計画)の「KOKERASUの森林浴」=写真、学生の部は村田裕磨さん(東北大)の「杜の繋ぎ目」が最優秀に選ばれた。  昨年に続き2回目となるコンテストのテーマは「新幹線が停車する駅周辺に屋根を架ける」。実務者の部に2作品、学生の部には5作品の応募があり、プレゼンテー… Read More
  • 【講演会】乾久美子氏が宮城県七ヶ浜中学校や延岡駅周辺整備プロジェクトを紹介 東北芸工大 東北芸術工科大学は7月1日、山形市の同大学建築・環境デザイン学科ギャラリーで建築家の乾久美子氏(乾久美子建築設計事務所代表)=写真=を招き講演会を開く。  当日は「七ヶ浜中学校などについて」と題し、近作の宮城県七ヶ浜中学校や宮崎県延岡駅周辺整備プロジェクトなどを紹介する。午後6時30分から。定員は100人で、入場は無料。問い合わせは同学科・電話023-627-2189。 建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら … Read More
  • 【建築】老夫婦が余暇を楽しむメンテフリーな家 神成建築計画事務所の「東船橋の家」 神成 建築計画事務所(千葉市花見川区、神成健代表)が設計を手掛けた「東船橋の家」は、千葉県船橋市にある。  施主はアクティブな老夫婦。同じ敷地の木造2階建ての家に住んでいたが、2人の子どもが独立した後はあまりに広く、日当たりも悪かった。  今回、建て替えた家について施主からは、空き巣が多いため外部に対する開口部を最小限にしてほしいことや、家のストレスをなくして趣味に時間を費やすためメンテナンスフリーとすることなどを要望された。  デザイン… Read More
  • 【ポラス学生建築コンペ】最優秀賞は東京理科大大学院の村松佑樹さんらの『衣替えする住宅』 ポラスグループは25日、埼玉県越谷市のポラス本社ビルで「第2回POLUS-ポラス-学生・建築デザインコンペティション」の公開審査会を開いた。  「時のかさなり」をテーマに全国の大学から応募のあった447作品から選ばれた5グループが発表し、最優秀賞は東京理科大大学院の村松佑樹さん、山本大地さん=写真左=による『衣替えする住宅』、優秀賞に大分大大学院の山崎基弘さん、村上大昴さん、大堂麻里香さんによる『つもる蔵詩』がそれぞれ受賞した。  審査委… Read More
  • 【技術裏表】南極の自然と「けんかしない」12角形の観測棟 ミサワホーム47年の挑戦 南極昭和基地に建設される基本観測棟の部材生産を担当するミサワホームでは、部材製作の最終段階を迎えている。「けんかをせず、いかに自然と共存できるか」。商品開発本部技術部耐久技術課長の秋元茂氏は、51次越冬隊員の経験を踏まえ、施設づくりの考え方をそう力説する。南極での建物受注が36棟目を数える同社が導き出した基本観測棟のフォルムは12角形であった。  まさに同社は南極昭和基地とともに歩んできた。第10居住棟を受注した1968年(10次越冬隊)… Read More

5 件のコメント :

  1. Google SketchUpで寛永度江戸城天守の3Dモデル(イメージ)を作成し、3Dギャラリーで公開しています。Google Earthで現代の東京で配置して眺めることができます。
    >> https://plus.google.com/photos/104104140735963267269/albums/5751614740842121633
    >> http://sketchup.google.com/3dwarehouse/details?mid=3f31947509d5053d92e36b50e78f27a1

    返信削除
  2. 賛成!
    東京五輪のシンボルとして再建してほしい
    (エレベーターとか付けないでください)

    返信削除
  3. 江戸幕府の、武断政治から文治政治への転換の象徴である歴史的遺産を、「破壊」するのは、絶対にやめて頂きたい。日本人のアイデンティティーを、天守再建で回復する、という理屈も、大層おバカな発想である。

    返信削除
  4. まったくその通り。天守閣が無い(天守閣を再建しない決断をした)事が重要なのだ。保科正之公が草葉の陰で泣くぞ。

    返信削除
  5. 焼失した江戸天守、なんでこれが新しいシンボルなのか理解に苦しむ
    勝手な思い入れで勝手な団体がやっているだけ
    建築学会も相手にしていないから
    どちらかと言えば直接無関係な都市計画学会とかを巻き込んでいるんだろうけど

    返信削除