2012/06/11

壊れにくい堤防へ 宮城県が菖蒲田海岸復旧に本格着手

復旧へ向けて一斉に鍬入れを行った
 宮城県は7日、東日本大震災で大きな被害を受けた菖蒲田海岸(七ヶ浜町)の災害復旧工事に本格着手した。海岸堤防をかさ上げするとともに、津波が堤防を越流しても壊れにくい“粘り強い構造"を採用する。2015年度の完成を目指す。菖蒲田海岸は、1888年に東北地方で初めて開設された海水浴場・菖蒲田海水浴場のある海岸で、震災前は年間10万人以上の海水浴客でにぎわっていた。

 しかし、昨年3月の大震災では約12mの津波が襲い、海岸堤防の約135mが破堤したほか、陸側法面約300m、堤防天端約120m、海側法面約70mが被災。また、平均51cmの地盤沈下が確認されている。
 このため、長さ約1・7㌔にわたる区間で、災害復旧工事を実施する。
 第1ステップとして、13年1月末までに既存堤防に約10mの幅で腹付け盛土を行い、強度を確保する。
 第2ステップでは、数十年から百数十年に一度の頻度で発生するL1レベルの津波に対応できるよう、堤防の高さを震災前の標高5mから6・8mにかさ上げする。地盤沈下した分を含めると現在より2・3m高くなる。
 また、堤防被災の主因が、津波が陸側の法面をえぐるように渦巻いて洗掘したことにあることから、陸側法面もコンクリート張りとし、法尻には鋼矢板を打設することで“粘り強い構造"を実現する。現在、パシフィックコンサルタンツで詳細設計を進めている。
 総事業費は29億5200万円を見込んでいる。
 この日の式典には、関係者約50人が出席。冒頭、三浦秀一副知事は「津波から命を守る第1線堤となる海岸堤防の早期復旧が待ち望まれており、きょうの着工は復興まちづくりの第一歩となる。1日も早い復旧に向けて全力で取り組んでいきたい」とあいさつした。
 渡邊善夫七ヶ浜町長も「菖蒲田海岸は町民にとっての原風景であり、心の拠りどころだ。復旧工事の着工は町の未来へつなぐ大きな一歩となる」と語った。
 この後、佐藤勝幸県仙台土木事務所長による工事概要説明に続いて、関係者12人が鍬(くわ)入れを行った。

『大規模災害に強い自治体間連携 ― 現場からの報告と提言』 AmazonLink

Related Posts:

  • 【復興特別版】月進掘削長233mは日本記録! 三陸沿岸道最長の吉浜釜石道路新鍬台が貫通  東北地方整備局が、復興のリーディングプロジェクトとして整備を進めている三陸沿岸道路で最長となる吉浜釜石道路・国道45号新鍬台トンネルが待望の貫通を迎え3日、岩手県大船渡市と釜石市にまたがる現地で式典が開かれた。施工は前田建設が担当。今後、覆工コンクリート工事などを進め、2017年3月の完成を目指す。  吉浜釜石道路は、三陸沿岸道路の一部をなす約14㎞の自動車専用道路。完成すれば既存の現国道45号の急カーブ・急勾配を解消し、走行性、安全性… Read More
  • 【復興特別版】南三陸町で初の公民館再開! 中学校校舎を活用した戸倉公民館が落成  東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の戸倉公民館が完成し、10日に落成式が行われた=写真。式典には、住民および関係者ら約100人が出席し、地域コミュニティー再生の新たな場として整備された公民館の完成を祝った。10月1日から供用開始する。町内で被災した3つの公民館のうち、再開するのは同公民館が初めて。  公民館の再建には、旧戸倉中学校校舎が活用された。同中学校舎は東日本大震災の津波で1階部分が被災して廃校となり、今後の利用方法について検討… Read More
  • 【戸田建設】金華サバも牡蠣味噌もバッグも! 震災復興支援で販売会@本社  戸田建設は7日、東日本大震災復興支援の一環として、被災した食品生産者の商品販売などを全国で実施している『希望の環』による販売会と被災した女性が針子となって作成した手芸品の全国販売を行っている『千寿の会』の販売会を同社本社ビル(東京都中央区)1階で開いた=写真。東京都立足立特別支援学校によるパンの販売会も実施した。  希望の環は、金華サバの缶詰や牡蠣味噌、おつまみ牛タンなどをボランティアとして参加した産業能率大の女子学生4人が販売し、千寿… Read More
  • 【宮城建協】「3A」防災林、大きくな~れ! 岩沼の海岸にクロマツの苗木1000本植樹  「大きくなーれ、大きくなーれ」--。宮城県建設業協会(千葉嘉春会長)は22日、岩沼市内の海岸で「みんなでつくる3A(あんぜんに、あかるく、あたたかい)の防災林」植樹式を開いた。  同協会と県知事、岩沼市長の3者が9月に締結した「海岸防災林の再生に向けた活動協定」に基づき実施する初めての植樹で、協会会員企業の社員やその家族ら約140人が参加した。 席上、あいさつに立った千葉会長は「防災林が地域の安全を守り、人々に対して明るく、あたたかいも… Read More
  • 【竹中工務店】やりたい仕事で働いてみよう! 復興まちづくり「子どものまち・いしのまき」  竹中工務店が被災地の子どもたちの成長支援を目的に山形大学と共同で立案した「子どもと築く復興まちづくり」の復興カリキュラムに基づいて、「子どものまち・いしのまき2016」が1、2の両日、宮城県石巻市で開かれた=写真。子どものための石巻市民会議が主催し、地元住民やボランティア、同社社員が運営に協力。今回で5回目を迎え、市内や近郊から約1200人が参加した。  市内の商店街の一画で開かれたイベントに参加した子どもは、教師や警察官などやりたい仕… Read More

0 コメント :

コメントを投稿