2012/06/30

BIMを使って入居者説明 中部整備局が静岡・新設庁舎の設計で初実施


入居官庁への説明で使われたBIMモデル

 中部地方整備局営繕部と静岡営繕事務所は21日、同局として初めて、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用して、庁舎新設の設計プランを入居予定官庁に説明した。同局がBIMを試行している「静岡地方法務局藤枝出張所」(静岡県藤枝市)がそれ。国土交通省官房官庁営繕部が検証を進めているBIM導入プロジェクト3件のうちの1件で、設計業務での活用となる。既に東京都内の案件で設計内容の可視化などのBIM活用メリットが確認されているが、地方の案件で中堅・小規模事務所が設計を担当した場合にも同様の効果が無理なく発揮されるかどうかが焦点となっている。

 同日は、中部整備局の職員8人と設計を担当する徳岡設計の所員2人が、静岡市の静岡法務総合庁舎会議室で、入居者である法務省と静岡地方法務局の担当職員5人の前で説明した=写真。プロジェクターには、「静岡地方法務局藤枝出張所」の3次元モデルを投影。周辺や内部を歩き回ったり、建物を切断または透かして設備配管をあらわにする、建物に太陽を照らして季節ごとの日影の経時変化を見せるなど、多角的に解説した。
 中部整備局の那花弘行広報戦略官・営繕調査官は説明の冒頭、「建物に実際にいるような形で、細かいところも検討し、より良い施設づくりに反映していただきたい」と趣旨を説明した。完成後の姿が想像しやすくなる施工段階で新たな要望が出ると手戻りになるため、計画段階で明確にイメージしてもらうことが狙いだ。
 説明を受けた静岡地方法務局の柳田修会計課長は、「事務室や書庫などのスペース・動線を確認でき、実際に業務を行う際のイメージを持てた。内部から外の見え方も分かった」と話している。
 説明は、報道機関に一部公開された。入居官署と国交省営繕組織との協議が公開されるのも「恐らく初めて」(中部整備局)という。
 静岡地方法務局藤枝出張所は、規模がRC造3階建て延べ3144㎡。設計は徳岡設計が担当。建設地は静岡県藤枝市青木1-4-11ほか。施工段階でのBIM活用については、本省と調整した上で判断する方針だ。2013年度の着工を予定している。

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