2012/06/02

BIM導入支援の「ビム・アーキテクツ」代表 山際氏に聞く

BIMをフル活用した駅前広場のコンペ案
 ビム・アーキテクツ(本社・東京都目黒区、山際東代表)は、年10件程度の建築プロジェクトに対し、協力事務所としてBIM導入の支援役を担っている。その実力が評価され、現在は国土交通省官庁営繕部が試行する初のBIM導入案件にも参加している。山際代表は「いまは下支え役に徹しているが、今後は設計者として蓄積してきたBIMのノウハウを生かして、独自の生産マネジメントを展開したい」と、さらなる飛躍を誓う。

◇設計者としての参加めざす

 山際代表はゼネコンや組織設計事務所、アトリエ事務所、ディベロッパーといった多様な勤務経験を経て、2008年に独立した。「3次元設計との出会いがBIMの本質を知るきっかけとなったが、属していた組織の中では思い描く新たな設計プロセスを推進することは難しく、独立を決意した」と当時を振り返る。
 ゼネコンや大手設計事務所からBIMの支援役として声がかかるまでに急成長した。「それでもまだ大型プロジェクトに参加させてもらえるのは年2、3件に過ぎない」。だが、最近は国交省初のBIM試行プロジェクト「新宿労働総合庁舎」を始め、民間案件でも大型の研究施設に準大手ゼネコンと共同参画が決まるなど、忙しさを増している。
 「いまはBIMを軸に協力事務所の立場で仕事をするケースが多いが、これからは一級建築士事務所として設計者の立場でプロジェクトに直接かかわる機会を増やしたい。BIMを設計ツールとして活用することで、格段に効率的で濃密な設計を展開できる。設計領域だけにとどまらず、プロジェクト全体をマネジメントする立場として取り組みたい」

◇日本式IPDの実現へ

 数多くのBIMプロジェクトを下支えする中で「日本式IPD(インテグレーテッド・プロジェクト・デリバリー)を実現したい」という思いが強くなった。IPDは関係者が共通の目標を持ち、プロジェクトの成功に向かう考え方が根底にある。「米国のような契約社会では機能する仕組みだが、日本の生産システムには工期や予算の変更に自助努力で吸収して解決する文化が根付いている。そのためにもBIM導入の効果を明確に示すことが重要になる」
 ポイントは「関係者がいかにBIMの価値を共有できるか」であり、「コストメリットを明らかにできれば、共有の目標として突き進める。その点でもBIMはビルディング・インテグレーテッド・マネジメントでもある。『モデリング』はプロジェクトを具体化する方法だが、プロジェクト全体を成功に導くには『マネジメント』と置き換えた方が当てはまりやすい」

BIM業務支援を行ったスタイリオ元住吉
◇小さめの事務所にメリット

 BIMプロジェクトへの参加が年々増加するにつれ、BIM導入に向けた企業からのコンサルティング依頼も後を絶たない。7月からは新たなコンサルメニューを拡充する。「あえて自立型のメニューとして、3カ月でBIMを導入できるスケジュールを考えている。何から何までお膳立てするのではなく、導入企業が最終的に自立できるように補助輪を一つひとつ外し、ランディングさせる」
 自社でスタッフのスキルアップに取り入れているメニューをベースに構築した。大手企業を中心に導入が拡大しているBIMではあるが、メリットを発揮しやすいのはむしろ「中小規模」と強調する。「われわれのように4、5人の小規模事務所から50人の中規模ぐらいが、実は一番メリットを見出せる。BIMは同時並行で意匠、構造、設備の設計を進めるため、人材配置を自由に調整できる。特に内製化によるコストメリットも大きい」
◇会社概要
▽設立=2008年7月
▽社員数=4人
▽本社所在地=東京都目黒区中央町1-16-14 飯島ビルpart3 2階
▽電話=03-6303-3768
▽ファクス=同3769
▽URL=http://bimarch.com/

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