光が差し込むゲストラウンジ |
明治建築界の大御所、辰野金吾が設計した東京駅丸の内駅舎は、1914(大正3)年に創建された。赤レンガのその堂々たる姿で多くの人々に愛されてきたが、1945(昭和20)年の東京大空襲でシンボルだった南北のドームや屋根・内装を焼失、戦後、3階建ての駅舎を2階建て駅舎にして復興した。
◇500台超の免震装置
復原工事は、外観を創建時の姿にするとともに、建物長さ335m、重量7万tの駅舎を仮り受けして支えながら地下階を新設、巨大地震にも耐えられる建築とするため、地下躯体上部にアイソレータ約350台とオイルダンパー約160台の免震装置を設置するという、世界的にも例がない、まさに世紀の大事業となった。
完成後の規模は、鉄骨レンガ・RC・S・SRC造地下2階地上3階一部4階建て延べ約4万3000㎡。外壁に使用した化粧レンガは色、平滑さ、ピン角、寸法などを再現、3階部分の構築に伴い、柱も創建時の形状にした。天然スレートの屋根の葺き方は当時の一文字葺きを採用、八角形のドーム内部は直径約20mで、壁面の色は文献などを参考に「黄卵色(おうらんしょく)」にした。天井付近にあった干支(えと)のレリーフや鷲の彫刻などの装飾も写真などを基に見事に甦らせた。
◇文化薫る空間創出
ヨーロピアンクラシックと現代デザインを調和させた客室 |
中央最上階の屋根裏部分には宿泊ゲストラウンジ(アトリウム)を整備、最大天井高さ9mの一大スペースで、天窓から降り注ぐ爽やかな自然光に包まれながら、食事をすることが可能となっている。
保存・復原に合わせ、既存の機能を拡大した東京ステーションギャラリーの空間は、壁に創建当時のレンガなどを活用した。さまざまな展覧会を行い、駅を単なる通過点でなく、薫り高い文化の場とする方針だ。
一方で、「先進性」と「先端性」をコンセプトに八重洲口の再開発にも取り組んでいる。現在、第1期工事で建設したグラントウキョウノースタワーとグラントウキョウサウスタワーとの間に、第2期工事としてグラントウキョウノースタワーの増築工事のほか、歩行者デッキの中央部・グランルーフや駅前広場などを整備している。丸の内側の「歴史」と八重洲側の「未来」が融合する国際都市東京に相応しい多彩な魅力を備えた新たなまちづくりを実践している。
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