2012/06/13

BIM歴3年未満のユーザーに人気 グラフィソフトのBIMガイドライン

ガイドラインは建築家の遠藤秀平氏が設計した
事務所ビルをモチーフにしている
 「予想外にもダウンロードの半数は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)暦3年未満のユーザーが占めている」と明かすはグラフィソフトジャパン(東京都港区)の飯田貴プロダクトマーケティングマネージャー。3月に無償提供を始めたArchiCAD向けのBIMガイドラインは、現時点で約950件ものダウンロードがあった。当初は、BIMを実践するパワーユーザーの活用が多くなると予想していたが、フタを開ければ「これから積極的に取り組みたいが、どこから手を付けるべきか、悩むユーザーの層が比較的多い」ことも分かった。日本では中小の設計事務所にBIM導入の動きが広がりつつあるものの、組織としての本格導入に踏み切る事例がまだ少ない。社内ルールの構築に思いのほか時間がかかっていることが背景にある。

 ガイドラインは、サンプルデータ、解説ドキュメント、テンプレート(図面作成のひな形)ファイルで構成。2次元から3次元への設計ワークフローに移行する際、モデル作成からデータ連携のルールまで一連の流れを解説している。建築家の遠藤秀平氏が設計した2002年竣工の事務所ビル(S・SRC造7階建て延べ約8000㎡)をモチーフに、データ構成を詳細に確認できる点も好評を博している理由の1つだ。
 BIMプロジェクトでは、3次元モデルから2次元図面を出力することが欠かせない。必要な出力部分があらかじめ把握できれば、そこを重点的に対応でき、より効率的なモデリングが実現する。ガイドラインではモデルと設計図面の両方を表示し、具体的にどのようにドキュメントを設定しているかも解説している。
 これまでのBIMは施主へのプレゼンテーションとして使うことが主流だったが、設計者の中には基本設計から実施設計、さらには確認申請まで一気通貫で活用したいという要望が拡大している。飯田氏は「3次元モデルの精度ばかりにこだわるのは業務効率が悪くなる。実務で使うのにフルモデルまでつくる必要はない。BIMをより合理化するツールとしてガイドラインを活用してほしい。社内標準を構築する際のサンプルになるはず」と強調する。
 BIM暦3年未満のユーザーの多くは、モデルを自在につくり施主へのプレゼンテーションにも積極的に活用しているものの、2次元への図面化で悩むケースが目立っている。実際に「データがどうリンクし合っているか」まで把握しなければいけない。本格導入にはそれを社内ルールとして定める必要もある。
 同社は3月に「基本設計図」編、4月には「実施設計図」編の提供を完了しており、6月中旬をめどに「確認申請」編もリリースする予定だ。「ユーザーの多くは自分自身のBIMのやり方に不安を持っている。問い合わせは実施設計段階が多く、ここが本格導入の第一関門ではないか」(飯田氏)と考えている。実はガイドラインの体験版を試す設計者も少なくない。同社にとっては新規ユーザー獲得の営業ツールにもなっている。

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