2012/06/09

V字中央に吹抜け空間 三上建築事務所の日立市立大久保中学校

日立市立大久保中学校の暇修ホール、撮影:掘内広治氏
 日立市立大久保中学校(茨城県日立市末広町5-12-34)が、2009、10年度に複数棟あった校舎の7割を建て替え、残る3割を大規模改造した。既存の校舎や体育館をつなぎつつ、グラウンドに正対させた新校舎はV字型の配置となった。設計に当たった三上建築事務所(水戸市)の益子一彦代表は、「校舎中央となる、V字の間の部分を学校全体の核とし、どのフロアにいてもみんなが見られる共通の場所をつくろう」と吹抜け空間「暇修ホール」=写真を設けた。

 風が抜け、明るい光が差し込むホールの2、3階には木の縦ルーバーを設け、温かみとともに落ち着きある空間を演出。吹き抜けの上にはセンサーで開閉する窓があり、ドラフト効果で空気の流れを誘導する。
 さらに天井を設けず木のルーバーを粗いピッチで張った。設備を交換しやすいだけでなく、天井がないことで高さを抑えられ、コスト削減にもつながるからだ。木材は以前からRC造校舎の内装に積極的に利用してきたが、近年は「いかに合理的かつ効果的に使うか」をテーマに据えているという。
 また、3教室ごとに放送室や印刷室、トイレなどを長手方向に挟み込むことで耐震壁を集約した。災害時に安全に避難できるだけでなく「地震後も引き続き使用できるよう、財産保全を含めた安全性を確保した設計にここ5年ほど本気で取り組んでいる」と力を込める。

『現代学校建築集成―安全・快適な学校づくり』 AmazonLink

Related Posts:

  • 【建築】磯崎新氏が宮城に「新しい方舟」 空気膜構造の可動式ホール 外観(色は赤で計画中) 音楽を通して東日本大震災の被災地に希望を届けようというプロジェクト『ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 松島2013』が宮城県松島町で9月27日から10月14日までの予定で行われる。「アーク・ノヴァ」とは空気膜構造の可動式コンサーホール。建築家の磯崎新氏とインド生まれの彫刻家アニッシュ・カプーア氏が協働して手掛ける。  スイスの国際音楽祭であるルツェルン・フェスティバルの呼び掛けで始まった、このプロジェクト… Read More
  • 【建築】明治期の貴重な遺構よみがえる 旧清水邸書院の復元が完了 東京都世田谷区の二子玉川地区で、再開発事業と足並みをそろえて同区が整備する都市計画公園『(仮称)二子玉川公園』。全体で約6.6haに及ぶ園内の一角では、約100年前に建設された近代和風建築の旧清水邸書院の復元工事が、清水建設の設計施工でほぼ完了した。4日には同書院を含め、区立初の日本庭園として4月14日に開園する約3.6haの第1期エリアがオープンに先立ち、報道関係者に公開された。保坂展人区長も現場を訪れ、新築時から“二度目の引越し"を経てよ… Read More
  • 【期間限定】虎ノ門パストラル跡に平田晃久氏デザインの「食とアート」施設 森トラストは4月24日、東京都港区の虎ノ門パストラル跡地に期間限定の屋外複合施設「MORI TRUST GARDEN TORA4」を開業する。同社とダヴィンチ・アドバイザーズがリーズ特定目的会社を通じて建設する、事務所、商業施設、共同住宅などで構成する複合施設「(仮称)虎ノ門4丁目プロジェクト」を新築着工するまでの暫定施設となる。営業終了時期は、2014年1月下旬を予定している。施設全体の建築デザインは建築家の平田晃久氏、演出照明はカラーキネ… Read More
  • 【復興版】JIA監修の復興モデル住宅が上棟 新宮城の家づくり協会 新宮城の家づくり協会(大竹雅之代表)が取り組む地域型復興住宅プロジェクト・みんなでつくるみやぎのいえシリーズの『黒い家』と『白の家』が2日、宮城県岩沼市三軒茶屋の復興住宅モデルハウス展示場で上棟を迎えた。日本建築家協会(JIA)東北支部(渡邉宏支部長)と同宮城地域会(鈴木弘二地域会長)が監修。黒い家は設計が都市建築設計集団/UAPP、施工は佐善工務店、白の家は設計がSOYsourece建築設計事務所、施工はセンケンホームが担当している。 黒い… Read More
  • 【建築】S造でも木造に見える構造材 川田工業の木質ハイブリッド集成材 川田工業は、H形鋼に木材集成材を被覆した「木質ハイブリッド集成材」を使った国内最大規模の建物を施工した。木質ハイブリッド集成材を柱と梁の両方に使用した初めてのケースだったこともあり、「現場では多くの課題が出て、手探りで対策を講じた」(同社)という苦労があったのも事実だ。今後、木質系部材のさらなる普及が見込まれることから、同社はいくつかの改善策を提案している。 この工事は、ポラテック本社ビル「ウッドスクエア」新築工事(埼玉県越谷市)。延べ約65… Read More

0 コメント :

コメントを投稿