2014/03/04

【尾肝要道路開通!】異例のスピード、2736mトンネルを15ヶ月で貫通

復興のリーディングプロジェクトとして東北地方整備局が建設を進めてきた三陸沿岸道路「尾肝要道路」の開通式が2日、岩手県田野畑村の現地で関係者約400人が参加し、盛大に開かれた。震災からの早期復興に向け、主要構造物である長さ2736mの尾肝要トンネルを15カ月で貫通させたほか、関係者が一丸となって「異例のスピード」で事業を推進した。岩手県内で開通した復興道路は、昨年10月の普代道路に次いで、2番目となる。
 
尾肝要道路は、田野畑村田野畑と同村尾肝要を結ぶ長さ4.5㎞の地域高規格道路。現道の閉伊坂峠には21カ所の急カーブがあり、最急勾配は10.1%に達する国道45号最大の難所で、地区間交流の障害となっていた。尾肝要道路が開通したことで、所要時間の短縮と走行安全性・アクセス性の向上が図られ、久慈市や宮古市との交流促進や地場産品の品質向上・販路拡大、観光入込客数の増加などが見込まれる。
 2006年度に事業化され、09年度から用地取得に着手。10年11月に着工した。11年3月の震災を契機に復興道路に位置付けられ、震災から8カ月後の同年11月に尾肝要トンネルの掘削に着手した。
 尾肝要トンネルの施工は安藤ハザマが担当。北工区1438mと南工区1298mをNATMにより両押しで掘削した。岩盤は固い花崗岩類で、掘削初期は発破で掘り進めたほか、切羽前方の地質状態を把握できる同社独自の弾性波評価システムを全国で初めて導入し、掘削パターンの妥当性を検証するなど、さまざまな創意工夫を経て、13年2月に貫通させた。13年度にはトンネル内の舗装や設備工事、改良舗装などを行った。 
 また、トンネルの掘削で発生した約33万tの土砂は、村営長嶺牧場やサケふ化場の地盤かさ上げ、三陸鉄道復旧工事などに再利用され、地域の早期復興を支援した。
 この日の開通式には、千葉茂樹岩手県副知事、石原弘田野畑村長、国土交通省の徳山日出男道路局長と小池剛東北地方整備局長、安藤ハザマの岩尾守常務執行役員東北支店長らが出席した。
 冒頭、あいさつに立った千葉副知事は「昨年10月の普代道路に続く開通で、命の道が三陸沿岸をつなぐことを実感している。復興のリーディングプロジェクトとして早期の全線開通を期待したい」と語った。石原村長は「かつて“陸の孤島”と呼ばれていた村は、道路や橋の整備とともに発展してきた。東日本大震災で受けた悲しみや怒りを創造に変え、未来に向かう復興道路とともに、新たな地域づくりに挑戦していく」と決意を表した。
 徳山道路局長は「震災以来、一緒に戦ってきた戦友とも呼べる人たちと開通を喜べることは光栄だ」とした上で、「3㎞近いトンネルを異例のスピードで、無事故で完成させてくれた施工企業の皆さんを始め、関係者に感謝したい」と述べた。
田野畑小学校の児童が20歳の自分にあてたメッセージをタイムカプセルに閉封した
この後、同整備局の工藤栄吉三陸国道事務所長の事業報告に続いて、地元田野畑小学校の畠山将太君と佐々木綾音さんが、地域の未来と将来の自分の姿を重ねたメッセージを披露。20歳になる8年後に向けてタイムカプセルに閉封した。続いて代表者によるテープカットとくす玉開披が行われ、歓声が響きわたる中、地元企業や村民を乗せたバスによる通り初めが行われた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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