2014/03/01

【現場最前線】馬木高架橋PC上部工事 見学会通して地元との関係築く

中国四国地方の中枢を担う広島都市圏東部エリアの高規格幹線道路として整備が進む東広島・呉道路。その一部として国土交通省中国地方整備局が建設している馬木高架橋PC上部工事が大詰めを迎えている。目の前を山陽新幹線が通るなど難しい現場環境の中で安全対策には万全を期し難題を克服。施工を担当する鉄建の神田隆司所長は「この現場の最大の特徴は地元住民との良好な関係」と胸を張る。現場では、毎日のコミュニケーションが絶えることはない。
◇新幹線が隣接、安全管理徹底

壁高欄型枠組み立て状況
 
馬木高架橋PC上部工事は、県道67号と2級河川黒瀬川をまたいで架設するとともに、現場から約50mの位置に山陽新幹線が通っているという厳しい条件下での施工となった。橋梁は、長さ291m、最大スパン長91mのPC4径間連続ラーメン箱桁橋。施工には厳密な施工管理が求められる張り出し架設工法を採用した。
張出し施工・コンクリート打設
 
作業を進めるにあたっては、常に高所作業となるため、墜落、転落、飛来、落下災害には十分気を配った。下にものが落ちないよう隙間のない足場を使用するとともに、ワーゲン(移動作業車)周囲にコの字型のアサガオ・シートネット養生の設置や屋根飛散防止用補強を施した。
 そのほか、端部横桁のマスコンクリート部にヒートパイプを利用し、冷却媒体の循環設備が不要なパイプクーリング工法を採用した。高温になる内部熱を外に放出させる同工法を採用した現場では「解析予想以上のクーリング効果を確認した」と大きな成果を上げた。

◇地元住民からの「ありがとう」

 安全管理について神田所長は「作業員の安全はもとより、現場下で生活している住民の皆さんの安心感が重要だった」と話す。地域住民とは、工事開始当初から良好な関係を築けていたわけではない。先祖代々の土地で長年暮らす住民にとって建設工事のイメージは決して良いものではなかった。その一方で何をやっているのか興味はあるがなかなか聞くこともできない。そういう思いは不信感につながると考えた神田所長は「工事開始当初から積極的にアプローチをかけた」という。
地元子ども見学会の距離当て・土木工事クイズ

 地道に理解を求める活動の中で地元向けの現場見学会は、住民の警戒感を解くきっかけとなった。最初に開催した見学会では「工法説明や機械展示などを中心に工事に対する理解を深めた」。工事が進んだ段階で企画した2回目は、地元子供会の協力を得て子ども向けの見学会を開催した。「終わった後のありがとうという言葉が何よりもうれしかった」と話す。

◇お互いにわかりあえてこそ

 その後も学生や建設業団体など多くの依頼を受け、見学者は延べ約350人にも及んだ。神田所長は「われわれ自身、公共工事で良いものをつくって皆さんに役立ちたいという思いで仕事をしている。それを理解してもらえないのはつらい。私たちの仕事を理解してもらいたいという思いは、この現場を経験して一層強くなった」と話す。見学会に参加した子どもたちには「君たちも将来、この道を走ることがあると思う。その時はおじさんたちの仕事を思い出してほしい」と伝えた。「興味を持ってくれている子どもがいることを実感した。この先、業界に入ってくれたらうれしい」と期待を込める。
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