2014/03/09

【現場最前線】労務不足カバーは職長の結束力で 福岡市新病院

福岡市の先進的モデル都市であるアイランドシティで、九州唯一の小児専門高度医療施設の移転新築工事が進んでいる。施工を担うのは戸田建設・松本組JV。現場を指揮する永島裕也作業所長(戸田建設九州支店)は、来年3月に定年退職を控えた59歳。これまで多くの病院建築に携わり、その集大成といえる現場には「全員の力を結集して悔いのない建物を造ろう」とのスローガンが掲げられ、労務不足という逆風に見舞われながらも、工期内の無事竣工に向けて、現場一丸となって取り組んでいる。

 
福岡市新病院建設工事は、開院後30年以上が経過して狭あい化・老朽化している福岡市立こども病院(福岡市中央区)をPFI事業で移転新築するもの。2012年12月15日に着工し、現場を訪れたことし2月13日現在の進捗率は45%程度(工事費ベース)で、躯体工事が上棟に向けて最終段階に入っていた。
 現場では、3万㎡を超える広大な敷地を生かし、鉄筋先組ヤード、梁型枠地組ヤード、資材ヤードを東西に設け、それらを揚重するクローラークレーンを配置している。約80m角ある建物を4つの工区に分け、1工区から順番に工事を進めており、現場訪問時は1工区の最上階躯体工事が完了し、上棟していた。
鉄筋や型枠は地組し、労務不足に対応
労務不足が懸念されたため、躯体工事に当たっては、鉄筋工、型枠工を福岡地区だけでなく、北九州地区からも手配した。福岡地区2社、北九州地区1社の計3社。うち、1社が2つの工区、2社が1工区ずつを担当。「この現場では、他の工区が厳しい時は応援し合っている」(永島作業所長)という。

◇職長同士でアイディア 他現場と合同運動会も

 職長同士の強い結び付きが功を奏しており、その結束力を醸成しているのが活発な職長会活動だ。日々の安全衛生活動に加え、バーベキュー大会や忘年会などレクリエーションも積極的に行われている。中でも好評だったのが、同じ福岡市東区にある雁の巣病院改築・改修工事の現場との合同運動会で、約200人が参加して現場対抗戦を行った。結果は引き分けだった。
 職長会の会長を務める日高建設の平井政文職長は「この現場は、職長会で企画したことを気持ち良く実行に移させてくれる」とほほ笑み、「職長同士でいろいろな話ができるため、JVとの打ち合わせ前に、職長同士で工程の調整が済んでいることもある」と打ち明ける。
 現場に従事する職人は約360人で、3月の最盛期には約400人となる。永島作業所長は「建物をつくり上げるのは職人の手であり、職人の目線に立った現場運営は、安全を含めた品質に必ずプラスになる」と強調する。

◇労務不足対策にST支保工枠
ST支保工枠

 当初から労務不足への対応策を練ってはいたものの、13年8月の地上躯体工事に入ったころから深刻さを増した。このため、クローラークレーンを1台増やし、4台体制を整えたほか、型枠工事では、梁下パイプサポートの代用としてST支保工枠を採用。「通常、型枠を支えるサポートは型枠大工が設置するが、ST支保工枠は専門のとび職が設置するため、型枠大工の労務不足を補うことができた」(永島作業所長)。
 この現場が最後となる永島作業所長。病院を始め、高層の庁舎、博物館、マンション、ターミナルビルなど数多くの建物に所長として従事してきた。「建築屋として恵まれている」と振り返った上で、「お客さまに満足してもらうことはもちろん、従事した人間が、この建物に携わって良かったと思われるような現場にしたい」と気を引き締める。

【工事概要】
▽発注者=FCHパートナーズ
▽設計・監理=山下設計
▽施工=戸田建設・松本組JV(建築)
   九電工(設備)
▽規模=病院棟・RC造6階建て(基礎免震構造)延べ2万8440㎡
▽病床数=一般病床233床(最大260床)
▽工期=2012年12月15日-14年8月14日
▽敷地面積=3万3000㎡
▽建築面積=8700㎡
▽建設地=福岡市東区香椎照葉5-26-39
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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