2014/03/03

【社員大工】育て!担い手 ポラスグループの「自前訓練校」とは

現場で作業に励む社員大工
建設現場の人手不足が深刻化している。東北復興の本格化や「アベノミクス」による官民の事業量増加が要因の1つに挙げられるが、その根底には技能労働者の高齢化と若手入職者の減少という産業構造的な問題が存在する。日本全体の傾向として高齢化の進行が避けられない中、若手の確保・育成がかぎを握るのは明白だ。埼玉県越谷市に本社を置くハウスメーカー、ポラスグループは自前で職業訓練校を設立・運営し、『社員大工』の養成を長年続けている。建設業界に置き換えれば、元請企業が自社で職人を抱えている形と言える。収益構造や下請形態は異なるが、先駆的な人材育成の取り組みから学べることは少なくない。

越谷市にある訓練校

 職人の高齢化に伴う将来の人手不足などを危ぐし、創業者の故・中内俊三氏が中央建築職業訓練校(現ポラス建築技術訓練校、越谷市)を設立したのは、いまから約27年前、1987年のことだった。現状を踏まえた上で振り返ってみると、その先見の明には感嘆させられる。

◇訓練校経て社員大工へ、技能五輪にも入賞

 訓練校は量的な問題だけでなく、プレカットなどの新しい工法や技術に対応でき、旧来の経験や勘に頼らない現代の職人を育てる狙いもあった。これまでの卒業生は628人を数える。


 工業高校などを卒業して入社した人はまず、全寮制の訓練校に入校する。座学や建て方などの技能実習を1年間受け、建築大工2級取得などの卒業条件をクリアした上で、社員大工として現場へ“巣立つ”ことになる。訓練校では、毎年15人程度の若手を養成しているが、2014年度は25人に増員する予定だ。
 社員大工は、グループ会社のポラスハウジング協同組合に所属。当然、社会保険にも加入しているし、賞与も出る。工高生などの人気は高く、入社志望者は全国から増加傾向にあるという。
 高精度に加工した木材を現場で組み立てるプレカット工法の普及などで、住宅を手掛ける建築大工の仕事はシステマチックになった面もあるが、技能を磨く歩みを止めたわけではない。社員大工の中からは、技能五輪全国大会の入賞者を多数輩出。昨年の第51回大会では金賞1人、銀賞2人、銅賞1人と、参加した4選手全員が入賞を果たす好成績を収めた。
 参加選手は、大会の3カ月ほど前から日常の仕事を返上して特訓に入るが、もちろん会社は通常どおりの給与を支払う。社員のモチベーションや技能向上のため、社を挙げてバックアップしている。

◇専属大工・業者で元下間の信頼感を強化

 現在の社員大工数は約140人。品質の平準化を図れる点も大きいが、「社員」の看板を背負うことによる責任感の醸成、さらには経営理念が現場の最前線まで行き渡るという目に見えないメリットも見逃せない。
 また、ポラスグループでは約340組の専属大工も抱えている。この中には、かつて社員大工として技能を身に着け、独立した大工もいる。社員であれば、年齢を重ねるとともに給料が増えていくが、体力のいる大工という仕事は「動けるうちが一番の稼ぎ時」と言える。独立しても専属大工として安定的な仕事量を見込める環境は、「腕で稼ぐ」職人を引き付ける。
 大工以外の内装や左官、設備工事などの発注先も基本的には専属の業者がいて、安定発注が元請・下請間の信頼感の強化につながっているという。
 持続可能な業界にするためには、若手の確保・育成が欠かせないが、少子化で労働力の絶対数は減っている。今後、人材確保の産業間競争はますます過熱する。自らの業界の魅力を高めるには他業界、関連業界の取り組みに目を向けることが必要不可欠となる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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