2014/03/15

【現場最前線】列車運行守る除雪作業 過酷な環境でも「やりきる」

越後中里駅~越後湯沢駅を除雪するMCR
2月に首都圏を襲った記録的な大雪により、列車を始めとする公共交通機関がまひしたことは記憶に新しいが、日本有数の豪雪地帯である新潟県湯沢町を拠点に軌道保守を担う東鉄工業新潟支店越後湯沢出張所は、過酷な環境下で毎年約184㎞に及ぶ線路の除雪に奮闘している。職員、協力会社、東日本旅客鉄道(JR東日本)の3者が連携した休日・昼夜を問わない不断の作業には、同社保有の除雪車が活躍するが、厳寒の下での人力作業も少なくない。チームワークと高度な技術、的確な判断力といった総合力と作業員の使命感が、列車の安全・安定輸送を支えている。
 
同出張所の担当エリアは、JR上越線約143㎞と同只見線約40㎞。職員は通常23人だが、12月下旬から翌年3月中旬までの「オンシーズン」には長岡出張所から4人が加わり、職員27人、協力会社41人の68人体制を組んでいる。
 豪雪地帯だけに、除雪車「モーターカーロータリー」(MCR)は同社内で最多の10台を保有し、JRの投排雪保守用車(ENR)3台と合わせた計13台で連日、線路上の雪をかき分ける。MCRは降雪がおおむね10cmを超えると10台がフル稼働するという。取材した6日は6台が出動し、7日には10台すべてが稼働する予定が組まれていた。
 基本的にMCRは1日1回出動して除雪作業に当たるが、降雪が多いエリアなどでは、夜間と日中の2回出動する。大雪の影響で列車が止まったり、線路脇の雪が崩れた場合などには緊急出動の要請があるため、降雪期の約3カ月間は気の抜けない状況が続く。
 同出張所の中村進所長は、除雪に当たり「速度制限標識や信号機などの設備を壊さないよう、慎重に作業を進めなければならない」と細心の注意を払う。MCRがはき出す雪の飛距離は最大40mに達し、線路に近接した民家などに当たらないように投雪するためには、高度な技術力も要求される。
 MCRには原則、責任者の東鉄工業社員、協力会社の運転手と除雪装置操作者の3人が乗り込む。責任者はJRの列車制御指令室(CTC)との綿密な連絡調整や状況に応じた雪の捨て場の指示のほか、作業時間の延長も判断する重要な役割を担う。
 列車が安全に走行できるかどうかは現場の判断に委ねられているだけにプレッシャーも大きいが、責任者になって3年目を迎える越後湯沢出張所の福田真彦主任は「中途半端な状況でやめてしまえば結果的に後々の列車運行に影響が出る。列車の安定輸送ができる状態まで『やりきる』という姿勢で臨んでいる」と強い使命感を持って日々の作業に当たる。
 「雪質や風向きによっては投雪の方法も変わってくる。同じ場所にばかり雪を集中させると雪崩が起こり、列車運行に影響する可能性もある」(福田主任)ため、作業にはテクニックだけではなく、高度な判断力が求められる。
過酷な状況下で人力に頼らざるを得ない部分も多い
線路上の作業は基本的に除雪車が担うが、駅構内や踏切部分などは人力に頼らざるを得ない。駅構内ではホーム以外に投雪スペースをつくる必要があり、「10人がかりで雪の投げ場を確保する」(同)という。
 降雪、厳寒下での作業は常に危険も伴うため、安全対策にも万全を期している。中村所長は「吹雪いている場合は、運転席から前が見えにくくなるので、CTCとの連絡調整を徹底にするなどして、安全な作業を確保する」と説明する。過去の事例から現場でのリスクを再確認する独自のツール『要注カード』などを活用した安全管理にも余念がない。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

Related Posts:

  • 【海外の現場から・上】“シミズブランド”が築く人脈と信頼 高層ビル「Menara ASTRA」特命受注へ  経済成長を続け、伸びしろの大きさにも期待が寄せられるインドネシア。12月上旬、首都ジャカルタで清水建設が施工する複数の現場を取材した。ODA(政府開発援助)や日系企業からの工事受注にとどまらず、現地大手企業からの特命受注案件もある。現地で約40年の歴史という裏打ちがあり、“シミズブランド”が浸透しているためだ。大石哲士国際支店ジャカルタ営業所長のインタビューとともに、現場の最前線をリポートする。画像は特命受注した超高層オフィス「Me… Read More
  • 【現場最前線】トンネル直上、角型鋼管を敷き詰め作業床確保 武蔵小杉駅の耐震補強  東鉄工業が進めていた横須賀線武蔵小杉駅付近高架橋の耐震補強工事が完成した。貨物専用トンネル直上での作業となるため、作業床の確保と資機材の落下対策が課題となる中、角型鋼管を敷き詰めて作業床を確保するなど創意工夫を重ねて安全を確保した。  この工事は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が首都直下地震対策として進めている耐震補強工事の一部。武蔵小杉駅の横浜方面に位置し、地中部に貨物専用の武蔵野線小杉トンネルとなる複層構造の高架橋橋脚に耐震補強を施… Read More
  • 【海外の現場から・下】高難度事業は腕の見せ所 ビー・ブラウン・メディカル社工場施設とMNCメディアタワー ◆ビー・ブラウン・メディカル社工場施設 多国籍調整にBIM ジャカルタ東部の郊外には複数の工業団地が立地し、日本も含め世界中の企業が進出している。このうちチカンペック工業団地で、清水建設は医療関連製品の国際企業であるビー・ブラウン・メディカル社の工場を施工中だ。大容量点滴薬パックなどを製造する工場で、37のクリーンルームや2つの生産ラインを備える。写真はストックヤード棟(右)。  この工場施設はRC造やS造の複数棟で構成し、規模は総延べ2… Read More
  • 【現場最前線】深夜施工で新たに階段を架設! アクセス改善ねらう小淵沢駅・乗換こ線橋改良  東鉄工業が東日本旅客鉄道の小淵沢駅(山梨県北杜市)で施工している乗換こ線橋改良工事のうち、新設階段の架設が完了し、10月から使用を開始した。階段の新設作業は、列車運行終了後の深夜の限られた時間内で施工する必要があったため、駅前に作業ヤードを確保し、昼間に階段を組み立てて360tクレーンで架設した。  小淵沢駅は、平日でも多くの観光客が乗降する観光の要衝で、小海線と中央線の接続駅でもある。従来、小海線に乗る場合は、改札口から地下通路を通っ… Read More
  • 【現場最前線】厳冬下の河川工事、品質と工程確保両立の工法で挑む JR上越線橋梁橋脚耐震補強工事  東鉄工業が2013年から施工しているJR上越線土樽~越後湯沢間の鉄道橋りょう橋脚耐震補強工事が最盛期を迎えている。現在、魚野川とその支流に架設されている第1魚野川橋りょう、毛渡沢橋りょう、第2魚野川橋りょう=写真=、第3野辺川橋りょうで河川内作業を進めている。川幅が広いため、いずれの橋も延長が長く、橋脚数も多い。豪雪地帯の厳冬期という厳しい条件下で、高度な技術とノウハウを生かし、品質と工程確保を両立している。  耐震補強では、既設橋脚… Read More

0 コメント :

コメントを投稿