地域発展の起爆剤として期待が集まる虎ノ門ヒルズ |
都施行の同再開発事業は、I・II街区に西松グループ、III街区に森ビルが事業協力者として参画し、I街区は西松ビルサービス、II街区は丸紅、III街区は森ビルが特定建築者として再開発ビルの建設と保留床の処分を施行者に代わって担当する。
今回のIII街区の最大の特徴は、こうした民間ノウハウの導入に加え、道路事業と再開発を合わせ、さらに立体道路制度を活用したことだ。
実現に長い時間を要した環状第2号線計画。大きく動き出したのが都市計画決定から40年以上を経た1989年。通常であればできない道路の上下空間にも建物を建設できる立体道路制度が創設された。これにより、従来の道路事業では立ち退きによる地元負担が大きかったが、建物が転居先となることで、地権者が地元に残ることが可能となった。
都都市整備局市街地整備部の土橋秀規再開発課長は、「建物デザインを始め、民間企業のノウハウなどを積極的に活用させてもらったことで、魅力的で処分性の高い建物を建築でき、円滑な事業の推進につなげることができた」とその効果を語る。
◆打ち合わせを重ね工期短縮に尽力
ただ、森ビルの萩野谷昭二設計統括部設計監理部部長は、「超高層ビルの建設に加え、その地下部分を環状2号線がカーブしながら坂道となって貫通するというこれほどの大規模開発は、一筋縄ではいかないところも多数あった」と振り返る。
工事面では、道路の工程を守ることが第一でありながら、限られたスペースで道路とビルを同時に、短期間で完成させなければならない。地下と地上を同時につくりながら、片側2車線のトンネルも造るため、重機の動線と資材ヤードを確保するだけでも困難を極めた。工法は、順打ち工法に比べて工期を約1年短縮できる逆打ち工法を採用。「(見えない地中に向かってカーブに沿う形で)237本の構真柱(最長42.2m)を狂いなく打ち込むこと」(萩野谷部長)が最大のポイントとなった。
そのため、萩野谷部長の提案のもと、まずは下準備に注力。新築着工の半年ほど前から設計事務所にゼネコンと設備サブコンを含めた総合図の打ち合わせを重ね、前もって構真柱をつくるなど、スピードアップのためのあらゆる工夫を怠らなかったという。
虎ノ門・新橋エリアは、森ビル創業の地でもある。萩野谷部長にとってもこの地は、「入社した当時、当社の本社ビルがあった場所。先人たちの思いを背負った案件」だけに、思い入れは一入(ひとしお)だ。「まだわれわれにとって第一段階」と位置付けながらも、竣工検査の際には「よくここまでやってくれましたね」と地権者に声をかけてもらったことが印象深いという。それは、「(施工を担当した)大林組とのかけがえのない信頼関係があったからこそ」と実感している。「先代の時代からお付き合いをしてきた間柄だからこそ、互いをリスペクトし、スムーズな意志の疎通ができた」とも。
車道本線を地下化することで地上部は緑豊かな「新虎通り」が 生まれ、多くの人が行き交う(写真提供:東京都) |
新橋・虎ノ門エリアは官庁街やビジネス街として成熟してきた歴史を有する一方で、環状2号線の事業の停滞もあって機能更新が遅れていた地域でもある。萩野谷部長は「虎ノ門ヒルズの完成が起爆剤となり、地域が一体となったマネジメントの展開によって、新虎通りがシャンゼリゼ通りのようににぎわいを生み出せれば」と期待を寄せる。10年後、20年後のこのエリアは、東京を代表するシンボルストリートを基軸に、国際新都心へと成長していく。
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