2014/03/28

【記者座談会】新年度、予算増加の影響は? 大規模プロジェクト続々進行

解体を控えた“聖地”国立競技場。新国立競技場の実施設計が並行して進められ、
五輪に向けた施設整備が本格化する
A 来週から新年度が始まる。何か大きく変わることは。
B まずは国の予算だろう。2014年度当初予算の一般会計は過去最大規模となり、減少の一途を辿っていた公共事業関係費も増加に転じる。一部マスコミが2年連続増などと報じ、公共事業の膨張論を展開する向きもあるけど、13年度の交付金廃止の影響を除けば、実質的には13年ぶりの増加だ。14年度の増加分も消費増税を踏まえれば微々たるもの。「ようやく下げ止まった」というのが実態だろうね。
C 公共事業費はあまりにも長い間、減少を強いられすぎた。このところ表面化したインフラの老朽化問題は、構造物からの警告とも言える。経済対策の観点からも予算の早期執行が欠かせない。当初予算という“発射台”の高さが今後も維持され、少しでも上向くことが期待される。その意味でも、増加に転換した14年度は大きな節目と言える。
A 消費増税の影響はどうか。
B 4月1日以降に引き渡しを行う建設工事などには8%の税率が適用される。ただし、昨年9月末までに契約を済ませた案件には経過措置が適用され、5%のままとなる。
D 気になるのは受発注者や元下、下下間の取り引きにおける転嫁拒否。買い叩きや契約総額からの増税分の減額、税抜き本体価格での交渉拒否などは違反になる。国も立入り調査や勧告などの体制を敷いている。
C 4月1日からは、印紙税の大幅な負担軽減や土木工事積算基準の改定も適用される。
A 大規模プロジェクトの動向は。
E なんといってもリニア中央新幹線の着工だろう。今秋以降になるようだ。ただ大深度地下利用のトンネル部は、施工者決定後シールド機製作に1年はかかる。14年度は最も長い工期が必要とされる東京都、名古屋市の両ターミナル駅部や大規模な山岳トンネルの準備工事、立坑が中心になる。
F 大深度地下利用と言えば、東京外かく環状道路の都内区間での本線シールドの施工者がすべて4月に決まる。ただ、これもシールド機の製作期間が必要で、一部の用地買収もある。本格的な掘削工事開始は1年くらい先になるだろう。
A ところで20年東京五輪に向けての動きは。
G “聖地・国立”の解体工事と並行して、新国立競技場の実施設計に入る。開閉式屋根の可否やザハ氏のデザインがどう反映されるか注目される。
H 五輪関連の施設整備が本格化するなど、都政における建築需要は今後、数年間の拡大傾向に先鞭をつける年になる。まさに“オリンピック工事元年”になりそうだ。
G 競技会場は、19年度のテストイベントまでに完成させなくてはならない。設計者選定や工事の契約手続きを考えると実質的には4年程度しかないからね。
F 世界最大級のクルーズ客船に対応する新客船ふ頭はマリコンにとって注目プロジェクトになる。首都直下地震を見据えた防災対策も20年を目標にアクセルを踏みっぱなしの状態だ。
G 都心部に目を向けると、4月2日には銀座六丁目10地区の市街地再開発が着工する。旧松坂屋を核に事務所、文化・交流施設からなる延べ約14.8万㎡の複合施設で、商業施設としても銀座で最大規模になりそうだ。
H 渋谷、新宿、池袋でもまちの再生が加速する。23区26市の14年度当初予算も一般会計で過去最大規模となる区市が目立つ。新庁舎整備や都心と臨海部を結ぶ地下鉄、新空港線「蒲蒲線」など新規鉄道路線の検討など、“攻め”のまちづくり姿勢が読み取れる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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