2014/03/07

【記者座談会】震災から3年 復旧・復興から地域づくりへ

震災から3年を経て、ようやく震災がれきの処理が終了する。宮城県内では処理業務従事者約1600人の再雇用に向けた活動が活発化している。写真は石巻ブロックの処理業務を担った鹿島JV事務所で1月に開かれた地元被災者向け就職面接会
A 東日本大震災発災から11日で3年となる。今の状況と課題は。
B 復旧・復興への最初の関門だった、震災がれき処理とライフラインの復旧はほぼ完了した。大きな被害を受けた沿岸地では、付加価値の高い6次産業化へ向けた植物工場や水産加工施設、大規模太陽光発電施設や風力、バイオマスなど再生可能エネルギーをてこにした新たなまちづくりなど、明るい話題も出てきた。
C 確かに明るい話題を探せばいろいろあるとは思う。でも高台移転などは用地の確保や住民の合意形成が難しく、労務・資材価格の高騰による入札不調などで、住宅着工や産業復興が遅れているのも事実だ。
D 先週、被災3県を取材で訪ねたが、復興の進捗は地域によってずいぶん違うなと正直感じた。それと今冬は大雪の影響もあって、いままで以上に大変そうだった。特にふだん雪が降らない地域での除雪のため、復興事業の合間を縫って出動しなければならず、各地域の建設会社はいずれも苦労していたようだ。
A 予算の手当では被災自治体に対して配慮はしているだろう。
B はっきり言えば、予算手当が十分だとか、計画どおり進めれば良いという問題ではない。被災者の生活再建を最優先することには誰も異存はない。でも、5年間の復旧・復興集中期間からさらに5年かけた長期の復興期間で住宅と施設整備ができたとしても、地域経済がその後も成り立つかという問題は残る。もともと被災した沿岸地域は過疎化と高齢化が急速に進んでいた地域だ。言い換えれば、復興に取り組む被災3県の今後の地域づくりとは、人口減少局面を迎えている日本の地方部が今後直面する課題でもある。
C 自治体を横断した広域的な地域連携による、新たなまちづくりの動きはあまり見えない。それと原発事故を受けた福島沿岸部をどうしていくのか。これが最大の課題だと思う。
D 宮城県では、県内で最後まで稼働していた石巻ブロックのがれき焼却処理が終わり、1月18日に仮設焼却炉を停止する火納め式が行われた。そのがれき処理を担った鹿島・清水建設・西松建設・佐藤工業・飛島建設・竹中土木・若築建設・橋本店・遠藤興業JVは、事業終了後も処理に携わった地元住民が建設関連業務に継続して就業できるよう当初から高所作業車や小型移動式クレーン、解体用機械運転技能特例講習などを実施し、離職者にもハローワークと連携して再就職支援説明会を開くなど支援策にも力を入れてきた。震災後、石巻では水産加工業を中心に雇用が減少する一方、建設業の雇用が増加しており、ハローワークは、宮城県内の処理業務従事者約1600人の再雇用に向けて活動を続けている。
A 復興に向けてさまざまな事業手法が導入された。
C 国土交通省の事業促進PPPや都市再生機構の復興CMは、新しい契約形態のため建設コンサルタントには不利な面もある。PPPは技術者がほとんど張り付いている状態のため、ほかの業務を手掛けることができず、経営の観点からは損失だ。しかし、国交省が鳴り物入りで導入したので、改善してもらいたい点があっても、批判と受け取られる可能性があるため言えないようだ。CMは最初に受注したコンサルが要望して改善されてきているので、あとで受注したコンサルは助かっていると言っていた。官民連携の看板を掲げていても、やはり対等ではなく、依然として甲と乙の関係と言えるようだ。
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