宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小惑星探査機「はやぶさ」で使った電力制御技術が、家庭やオフィスにあるインバーター制御機器に適用できるとして、核となる基板を取り込んだ製品の設計・開発や製造・調達、販売などを行うパートナーを募集している。HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)やB(ビル)EMSが集中監視であるのに対し、この装置は分散監視にすることで、「エアコン1台買えば始められるHEMS」へと“敷居”を下げられ、「共通基板を搭載した機器が加わるたびにHEMSが拡大されていく」というものだ。
「はやぶさ」の電力はソーラーパネルによって作り出され、供給される。しかも、機上には多数のヒータースイッチがあり、それらが時々刻々、オンになる数が変化しヒーター消費電力が変動する。一方で、供給される電力のうちの60%は、イオンエンジンに使われ、ヒーターに使われるのは残りの40%しかなく、優先順位を決めて供給量の枠をでないようにする必要がある。
開発された基板は、優先順位に従って電力を割り当てて供給することで、総需要量を抑制する機能を持つ。例えば、契約電力量が30アンペアならば、その範囲内で収まるようにする。エアコンとヘアドライヤーに装備したとすると、ヘアドライヤーを使う時はエアコンの消費電力を落として「枠内」にとどめるといった具合だ。
現在のHEMSは集中監視システムの形をとり、すべての配電路を“見える化”して始まる。そのため最初に大きな投資が必要となり、新築や大規模な改築でないとなかなか導入が難しい。さらに、現状の方式がコンセント単位で切断するまでの機能しかない、つまり、オン・オフ的な自由度のない制御にとどまっていると、JAXAは指摘する。しかも、各家庭、オフィスに固有のシステムであるため引っ越しに対応できず、コンセントに別の機器を取り付けると、集中管理の定義替えが必要になるといった手間もかかる。
それに対して、JAXAが開発した基板は家電機器単位で 「プラグ・アンド・プレイ」的に機能する点がポイント。集散・離散が自由な独立分散制御にしたことで、 導入する家やオフィスを限定することはない。 各機器間の通信方式には無線LANではなく、電力線通信(PCL)を使う。通信量が大きな量にならないことから、 放送などに影響のない狭帯域PCLが有力だ。
制御は、地域群、ビル群、フロア群、部課群ごとに可能。具体的には、事務所単位、フロア単位での電力制御ができる。オフィスビルの場合、入居しているテナントが希望する階だけの制御が可能だ。優先順位は、各機器にあらかじめ優先度を設定するが、使用時点の状態によって、各機器で優先度を更新できる。優先度が高くても使用率が低ければ、設定優先度が高くても実効優先度を下げることができる。
この基板を採用することによる最大のメリットは、省エネルギーではなく、契約電力の縮小だ。現時点では、最大使用料を考慮して、電力会社との間で契約電力を設定している。例えば家庭用では、日常的に40アンペアで済むものを、最大使用時を考慮して60アンペアで契約したりするが、電力を振り分けることで40アンペアの契約で済ませられる。その結果、基本料金が下がるというわけだ。
社会的にも、電力会社の供給能力に余裕を与えることができるようになる。
JAXAでは、宇宙開発を通じて得られた成果を、社会還元することも業務の1つであるとしており、協力先とパートナーを募集することにした。募集するのは、共同で(1)設計・開発を行う(2)製造(調達)を行う(3)製品を販売する(4)製品組み込み機器を製造・販売する--企業で、JAXA側からは共通装置(基板=知的財産権の出願済み)を提案する。JAXAベンチャー制度などを通じ、パートナーと協働していく。既に10社を超える企業が関心を示しているという。
JAXA産業連携センターのホームページ(http://aerospacebiz.jaxa.jp/)から問い合わせることができる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
「はやぶさ」の電力はソーラーパネルによって作り出され、供給される。しかも、機上には多数のヒータースイッチがあり、それらが時々刻々、オンになる数が変化しヒーター消費電力が変動する。一方で、供給される電力のうちの60%は、イオンエンジンに使われ、ヒーターに使われるのは残りの40%しかなく、優先順位を決めて供給量の枠をでないようにする必要がある。
開発された基板は、優先順位に従って電力を割り当てて供給することで、総需要量を抑制する機能を持つ。例えば、契約電力量が30アンペアならば、その範囲内で収まるようにする。エアコンとヘアドライヤーに装備したとすると、ヘアドライヤーを使う時はエアコンの消費電力を落として「枠内」にとどめるといった具合だ。
現在のHEMSは集中監視システムの形をとり、すべての配電路を“見える化”して始まる。そのため最初に大きな投資が必要となり、新築や大規模な改築でないとなかなか導入が難しい。さらに、現状の方式がコンセント単位で切断するまでの機能しかない、つまり、オン・オフ的な自由度のない制御にとどまっていると、JAXAは指摘する。しかも、各家庭、オフィスに固有のシステムであるため引っ越しに対応できず、コンセントに別の機器を取り付けると、集中管理の定義替えが必要になるといった手間もかかる。
電力制御基盤 |
それに対して、JAXAが開発した基板は家電機器単位で 「プラグ・アンド・プレイ」的に機能する点がポイント。集散・離散が自由な独立分散制御にしたことで、 導入する家やオフィスを限定することはない。 各機器間の通信方式には無線LANではなく、電力線通信(PCL)を使う。通信量が大きな量にならないことから、 放送などに影響のない狭帯域PCLが有力だ。
制御は、地域群、ビル群、フロア群、部課群ごとに可能。具体的には、事務所単位、フロア単位での電力制御ができる。オフィスビルの場合、入居しているテナントが希望する階だけの制御が可能だ。優先順位は、各機器にあらかじめ優先度を設定するが、使用時点の状態によって、各機器で優先度を更新できる。優先度が高くても使用率が低ければ、設定優先度が高くても実効優先度を下げることができる。
この基板を採用することによる最大のメリットは、省エネルギーではなく、契約電力の縮小だ。現時点では、最大使用料を考慮して、電力会社との間で契約電力を設定している。例えば家庭用では、日常的に40アンペアで済むものを、最大使用時を考慮して60アンペアで契約したりするが、電力を振り分けることで40アンペアの契約で済ませられる。その結果、基本料金が下がるというわけだ。
社会的にも、電力会社の供給能力に余裕を与えることができるようになる。
JAXAでは、宇宙開発を通じて得られた成果を、社会還元することも業務の1つであるとしており、協力先とパートナーを募集することにした。募集するのは、共同で(1)設計・開発を行う(2)製造(調達)を行う(3)製品を販売する(4)製品組み込み機器を製造・販売する--企業で、JAXA側からは共通装置(基板=知的財産権の出願済み)を提案する。JAXAベンチャー制度などを通じ、パートナーと協働していく。既に10社を超える企業が関心を示しているという。
JAXA産業連携センターのホームページ(http://aerospacebiz.jaxa.jp/)から問い合わせることができる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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