2014/03/20

【本】『20世紀を築いた構造家たち』彼らは何を想っていたのか

歴史とは物語に似ていると言われる。ある時代について語ろうとする時、人はその時代に起こった出来事のうちからいくつかを選択し、それらをつなぎ合わせることで歴史を紡ぎ出すしかないからだ。当然、そこで記述される歴史の背後には、おびただしい数の「記述されなかった」出来事が隠されている。
 本書は、そんな「記述されなかった」出来事に光を当てる。取り上げるのは、古今東西16人の構造家とその作品だ。20世紀初頭からRCという材料にふさわしい形態を模索し続けたロベール・マイヤール、スペイン内戦で自らが手掛けた競技場が崩壊する様を間近で見たエドワルド・トロハ、丹下健三と日本近代建築の傑作「国立屋内総合競技場」を生み出した坪井善勝--彼らの業績から浮かび上がるのは、完成した作品を見るだけでは決して感じることのできない構造家たちの「人間性」だ。
 彼らが悩み、苦しみながら、それでもなお自分の知識と感性と経験を信じて踏み出した大きな一歩。そんな、これまで歴史として記述されることのなかった構造家たちの息遣いを知ることのできる1冊。(オーム社、3200円)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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