2014/03/26

【原子炉冷却】災害時に電源なしでも空冷で除熱 日立、日立GEが開発

空気による除熱性能向上技術を適用した伝熱管

 日立製作所と日立GEニュークリア・エナジーは、沸騰水型原子炉(BWR)向けに、大規模自然災害が発生した場合でもポンプなどを駆動する電源を使うことなく原子炉を長期間冷却し、放射性物質の環境への放出を抑える空冷技術を開発した。原子炉を空気で冷却するための空冷熱交換器を構成する伝熱管などの表面にマイクロメートルサイズの微細な加工を施し、従来よりも熱を一部分に密集させ、形成された高温の空気層を一気に外気で取り除くことで、空気による除熱性能を約2倍に高める。
 開発した表面微細加工技術は、伝熱管を薬液で処理する簡易な湿式加工を使って、ステンレス製の伝熱管と伝熱フィンの表面に、マイクロメートルサイズの微細な凹凸を生成する。凹凸の部分に熱が密集し、高温の空気層を形成し、そこに外気から取り入れる空気を流し入れることで、密集した熱を取り除く。
 また、原子炉格納容器上部に、建て屋構造を活用して鉛直方向に伸びる流路を形成し、そこに空冷熱交換器を設置する。崩壊熱を冷媒などにより空冷熱交換器に導き、空冷熱交換器の下部から取り入れた外気と熱交換して原子炉格納容器内の熱を除熱する。
 空冷熱交換器との熱交換で加熱した外気は上部から排気する。空冷熱交換器で加熱された空気と、外気の温度差(密度差)を活用して、自然循環力により空気を流すことができる。
 原子炉の冷却に必要な伝熱管の本数は約2分の1に減り、空冷熱交換器の体積を半減するなど合理的なサイズまで小型化することができ、これまで設置が不可能だったスペースに対して空冷熱交換器を設置することが可能になるという。
 今回開発した空冷技術と、ポンプなどを駆動する電源を使わない水冷システムを組み合わせ、空気の自然循環力を使った原子炉自然冷却システムの実現に大きく前進したとみている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

Related Posts:

  • 【東大】折り紙を数学・工学・認知学に生かす国際会議 「第6回折り紙の科学・数学・教育国際会議」(6OSME、議長・三浦公亮東大名誉教授、日本折紙学会会長)が10日から13日まで、東京都文京区の東大弥生講堂で開かれた。主催は同会議で、日本計算工学会、日本応用数理学会、日本折紙学会が共催、前田建設、川上産業などが協力企業に名を連ねている。  折り紙は近年、芸術分野だけでなく、コンピューターサイエンスや機械工学、材料工学、高度な数学理論など、幅広い学問領域で研究者の興味を集めている。会議では、芸術… Read More
  • 【豪雨災害】各地整TEC-FORCE、協力企業が災害現場で懸命の作業 太田昭宏国土交通相は21日、土砂災害に見舞われた広島市安佐南区八木地区と安佐北区可部東地区を視察した。その後、中国地方整備局災害対策本部を設置している中区上八丁堀の広島合同庁舎を訪れ、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)隊員や職員を激励するとともに、2次災害への警戒を促した。広島市や同局出先事務所などからの要請を受けた企業が続々と被災地に入り、流出土砂の撤去などの復旧作業に当たった。出動した広島県建設工業協会の会員企業は20、21日の2… Read More
  • 【災害派遣】救命救助を最優先に 広島市土砂災害にTEC-FORCEを広域派遣 国土交通省は21日、非常災害対策本部会議(本部長・本田勝事務次官)を開き、広島市内で発生した土砂災害への対応を協議した。これまでに39人の死亡が確認されているほか、21日午前10時現在で7人が行方不明という状況に、太田昭宏国交相は「とにかく救命救助に全力を挙げる体制をとる。各省と連携をとりながら、国交省として救命救助を最優先に一丸となって取り組む」と述べた=写真。  国交省は20日からTEC-FORCE(テックフォース=緊急災害対策派遣隊)… Read More
  • 【配管技能コン】誤差1mmの戦い!! 一般の部優勝は横谷さん、高校の部は上林さん 大阪空気調和衛生工業協会(太田隆会長)は23日、大阪府東大阪市の府立東大阪高等職業技術専門校で「第6回配管技能コンテスト」を開いた=写真。現役配管工を対象とする「一般の部」に23人、未来の技能者を目指す「高校の部」には大阪府立布施工科高校、同東住吉総合高校、滋賀県立彦根工業高校の3校から18人が参加。「一般の部」優勝者に贈られる大阪府職業能力開発協会会長賞は藤井設備の横谷剛司さん、「高校の部」優勝の大阪府知事賞は彦根工業高校の上林隼さんが獲… Read More
  • 【産学連携プロジェクト】初会合! 社会基盤に中核的な技術・技能者を育成 文部科学省の委託事業として進められている「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」のうち、学校法人片柳学園日本工学院八王子専門学校が受託代表法人となっている「社会基盤分野の中核的専門人材養成プログラム開発プロジェクト」の、2014年度第1回産学官連携コンソーシアムおよび職域プロジェクト合同委員会が、東京都千代田区のアルカディア市ヶ谷で開かれ、14年度の取り組み概要が紹介されるとともに意見交換が行われた。今年度は職域プロジェクト… Read More

0 コメント :

コメントを投稿