2014/11/16

【ArchiFuture2014】「施工部門がモデリングすればいい」 大手5社のBIM担当が激論!

10月に開催されたイベント『ArchiFuture2014』で、ゼネコン大手5社のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)担当者が、「熟練技術者不足時代にこそ求められる施工現場における建設プロセス・イノベーション」について討論した。議論は現場の効率化から施工図表現や組織の役割分担といった従来ルールの見直し、さらには「施工」の業務範囲の拡大にまで発展した。

 参加者は、大林組の本谷淳建築本部PDセンター部長、鹿島の安井好広建築管理本部建築技術部BIM推進グループ長、清水建設の細川洋一生産技術本部生産技術部主査、大成建設の武藤靖久建築本部建築技術部課長、竹中工務店の森元一東京本店設計部プロダクト部長の5人。コーディネーターは、大成建設の猪里孝司設計本部専門技術部まちづくり・建築計画部長が務めた。
 冒頭、現場の負担を軽減し効率化したBIM活用事例を各社が紹介。「発注者や設計者との合意形成を前倒しして現場の手戻りをなくした」「3次元の施工図により職人の理解を促進した」「工区間の調整で難しい要求を聞き入れてもらえた」といった見える化のメリットや「工構法を選択する際のコストを比較できた」「各種図面を一から作成する手間を削減した」などの手応えも語られた。
 こうしたメリットを確認した上で、討論ではBIM活用を推進するために従来の枠組みを変える必要が出てくることが指摘された。
 例えば、設計施工一括プロジェクトでは、設計部門で作成したモデルを施工部門が引き継ぐ際、モデリングルールの確立が必要となり、川上部門の責任負担が大きくなるため、むしろ設計部門から情報を得ながら施工部門がモデリングする方が合理的になる。
 また、3次元の施工図を作成するのであれば、2次元の施工図もBIMモデルから切り出した方が効率的だが、線の太さや書体などの「見栄え」に関する各社のルールを満たせない場合があり、そのルールが本当に必要かどうか再考が迫られている。
 さらに、ゼネコンにとっては、自ら作成したモデルを基に、ファブリケーターに工作図や組立図を作成してもらえば、変更が生じた場合などのリスクは元請けが負うことになるものの、従来下請けに払っていたリスク経費は削減できる可能性も出てくる。
 こうした議論を踏まえ、猪里部長は「目の前で困っていることを解決していくことの積み重ねにより、建築現場の姿が変わり、将来の建築生産が変わる」とまとめた。
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