2014/11/01

【BIM】データ連携環境の整備が急務 IAI日本がIFC検定に乗り出す

「このままでは、せっかくのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データが台無しになってしまう」と警鐘を鳴らすのはIAI日本の山下純一代表理事。日本国内では意匠、構造、設備の統合モデルに挑む先進的なBIMプロジェクトが出てきたものの、データ共有の不具合調整に時間をとられてしまうケースは少なくない。3次元データ標準フォーマットとして普及するIFC(インダストリィ・ファンデーション・クラス)形式だが、データ互換の細かな規格が定まっていないため、スムーズな情報共有の妨げになる場合がある。BIMソフトを提供するベンダー側のシステム環境を整えようと、IAI日本がIFC検定に乗り出そうとしている。画像はIFCによる3次元建物モデル表現例。

 BIMソフトは、他のソフトと相互にデータをやり取りする手段として、共通のBIMデータ形式であるIFCを採用している。国際的にはIFC認証の枠組みが整い、ソフトベンダーの中には認証を受けているケースも多い。IAI日本IFC検定委員会の足達嘉信委員長は「国際認証は大枠のルールであるが、建築の基準が国ごとで違うように、IFCの細かな規定の部分をその国の実情に合わせる必要がある」と解説する。既にフランスや韓国などは独自の認定に取り組んでおり、国際的にみればBIMの普及に呼応するようにIFC検定の流れは拡大基調にある。

国際IFCソフトウェア認定で使われているIFCビューワの画面
そもそもIFCは、IDM(インフォメーション・デリバリー・マニュアル)とMVD(モデル・ビュー・ディフィニション)の仕様で構成されている。例えばビル風の解析を行う場合、活用するデータは建物外壁であり、建物内部の情報は必要ない。IDMはこのように業務の内容によって必要なデータ連携の要求や、業務プロセスにおけるデータフローの分析をプロセスマップという手法で定義したものである。一方のMVDはIDMで記述されたデータ連携の内容をIFCのどの部分で対応するかを示す大枠のルールである。
 山下代表理事は「早急にソフトのデータ連携環境を整えなければ、せっかく盛り上がってきたBIM導入の機運に水を差してしまう。実際に使っても不具合が生じてしまえば、設計者や施工者はBIMにレッテルを貼るだろう」と危ぐしている。国土交通省の官房官庁営繕部が4月に策定したBIMガイドラインにもIFCの扱いが明記されたように、BIMの導入拡大を背景にデータ互換性はよりクローズアップされている。

2002年に東京で行われたIFCソフトウェア認定に向けてのワークショップ
IAI日本は、設備関連分野から認定事業をスタートする。11月に検定の申し込みを受け付け、2015年3月にも認定を完了する予定だ。日本では5、6社の設備系ベンダーが販売を進めているが、国内に本社を置く社が大半を占め、自ら認定を求める声も出ていた。意匠系ソフトの中にも設備機能の部分で認定を取得する動きも期待できる。既にIAI日本が設備設計分野のIDMを固めていることも認定を先行した理由の1つだ。検定委員会委員の山本賢司氏は、「設備分野を通じて検定自体の課題整理を行い、来年度以降は他の分野にも対象を広げたい」と説明する。
 日本のBIM市場では設計から施工、維持管理に至るまでプロセスごとに専門ソフトウエアが多数存在している。足達委員長は「これだけソフトが充実している国は他にない。ゆくゆくはIAI日本が国際認証の代理機関としても検定を発展させていきたい」と考えている。検定料は会費種別によって20万円と40万円に異なる。BIMの導入機運を盛り上げるためにも、データ互換の実現に向けたソフト業界の前向きな対応が求められている。
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