2014/11/16

【素材NOW】受け取り人、送り主、配達人の3方良し! amazon対応の次世代ポスト

「投入口を左右に1cm広げるのに、30年かかってしまった」。ナスタ(東京都中央区)の笹川順平社長は、新たに市場投入した郵便受箱(ポスト)への思いをそう表現する。ネット通販が普及し、メール便の配達件数が大幅に増加する中、ポストに入らない荷物は65%にも達する。これを解消できれば配達の効率化やドライバーの業務負担軽減にもつながると、日本郵便やアマゾンジャパンも賛同し、差入口の大きい次世代ポストが誕生した。
 ネット通販で利用されるメール便のすべてを入れることができる大型ボックスは縦35cm、横37cm、厚さ3.5cmのサイズ。送り先が不在の場合、従来の郵便ポストでは投入口が狭く、65%の荷物が再配達を余儀なくされている。「素早く確実に商品を届ける手段として、投入口の大きな次世代ポストは貴重な物流インフラになる」とアマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は強調する。

笹川ナスタ社長(中央)、チャンアマゾン社長(左)、髙橋日本郵便社長(右)
これに日本郵便の高橋亨社長も同調する。「投入口を広げるだけで送り主、受け取り先、そして配達する人それぞれがメリットを見いだせる」と、大型ボックスの普及によって再配達の業務負担を大幅に軽減できる期待を強く持っている。期限付きだが、基準を満たす集合住宅用の郵便ポストを設置した場合、1戸当たり500円の手数料を補助する制度の運用を始めた。
 ナスタの次世代ポストは戸建て住宅用『Qual(クオール)』と集合住宅用『D-ALL(ディーオール)』の2種類。マンションへの販売実績で45%のシェアを誇る同社は年間30万戸分のポストを出荷している。笹川社長には「強みの集合住宅向けでは出荷のすべてを次世代ポストに切り替えたい」との強い思いがある。
 ディーオールは荷物を入れて前から取り出すタイプと後ろから出すタイプの2種類。価格(税別)は前出しが1戸当たり1万1000円から、後出しが1万2000円から。ポストサイズは従来のままだが、投入口は左右に1cmずつ広がった。「荷物の65%がポストに入らない状況を真摯に受け止め、それを改善するのがわれわれの使命。マンション向けポストの投入口を広げるまでに、30年もかかってしまった」(笹川社長)。
 背景には、マンション特有の制約がある。セキュリティーを意識し、投入口を広げることに対する懸念がユーザー側にあるほか、事業者サイドではエントランスを少しでも広く確保するためにできる限り小さなポストサイズを要求するケースが多く、よりコンパクトで低価格の商品が売れ筋になっていた。

抜き取り行為を防ぐソフトダンパー機能
次世代ポストの開発ではアマゾンと連携する形で、ポスト自体のサイズはそのままに、多種多様なボックスの出し入れに最適な投入口のサイズを徹底検証してきた。投入口が広がることで、配達物を盗まれるリスクが高まる。それをいかに回避するかが重要な開発テーマになった。考案したのは独自のフラップ構造を採用し、抜き取り行為を防ぐソフトダンパー機能。これにより投入口を従来より1cm広げる道筋が整った。
 2016年3月末までを期限に集合住宅への設置補助をスタートさせた日本郵便では基準を定め、高さが12cm以上のポストで投入口から縦34cm、横26cm、厚さ3.5cmの郵便物が収納できれば補助対象とし、期間中に20万戸への補助を目標付ける。高橋社長は「たとえ20万戸の設置が完了しても、日本全国で見れば再配達解消の目に見える効果とまではいかないが、状況を見て次のステップを踏みたい」と考えている。
 ナスタは、次世代ポストを足がかりに、マンションのシェアを15年度末に60%まで拡大させる戦略図を描く。大和ハウス工業が東京都世田谷区の戸建て分譲住宅に採用することも決まり、好スタートを切った。笹川社長は現在3分の1にとどまる既存ポストの取り替え需要への対応にも「スピード感を持って挑む」と力強く語る。
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