2014/11/23

【メンテ日本】920メガヘルツ帯を使え! インフラ老朽化に無線監視システム

沖電気工業が、インフラの老朽化対策や防災対策への対応に本腰を入れている。強みのセンサー技術や無線技術などを生かし、変状を常時監視できる機器やシステムを開発。今後需要が見込まれるインフラ点検業務への投入を見据え、実用化に向けた検討を進めている。そのかぎを握るのは、920メガヘルツ帯無線の活用にあるという。

 電波の利用は総務省が一括管理しており、その利用には電波使用免許や使用資格免許が必要だ。ただ、小型の無線機器の活用を促す狙いから、一部の周波数帯の使用では免許を免除している。920メガヘルツもその1つで、2012年から活用が始まった。障害物があっても回り込んで電波を到達させ、ネットワークがつながりやすいという特徴があり、工場や病院といった構造が複雑な建物のほか、屋外での活用も見込まれている。


◆マルチホップ無線

 同社は、電波の使用開始から2年足らずで市場としての開拓が進んでいない点に着目。市場の発展が見込まれるインフラの老朽化対策や防災対策に920メガヘルツ帯無線を活用することにした。特に、同社が開発した「マルチホップ無線」の強みも生かせるとして、事業に注力している。マルチホップ無線は、通常は親機と無線端末の距離が開いていたり障害があった場合には通信ができないところを、障害が発生しても別の端末のネットワークを活用して通信を確保し、切れ目のないデータの収集に生かす。
 この技術を活用し、河川の水位状況がリアルタイムで把握できる「河川監視システム」を開発した。無線通信で周期的に水位や雨量を収集できるため、河川を管理する職員が直接確認する時間を省ける上、周辺住民の避難誘導も的確になる。災害などで機器に異常が発生しても別のルートを介して通信ができるメリットもあるほか、設置工事が省力化できることで計測設備の設置が進んでいない中小規模の河川での監視も容易にできると見込んでいる。

◆工事も省力化

 さらに、無線センサーによるインフラモニタリング技術の実用化にも動き出している。橋梁やトンネルの劣化を検知するモニターを設置し、計測結果を無線で伝送することで常時監視する。監視データを常に収集できれば、変状が起きたタイミングや劣化予測などにも生かせる。「技術者が点検するのは数カ月や数年に一度で、定期的な点検では気づきにくい変化も把握できる」(川西素春通信システム事業本部スマートコミュニケーション事業部マーケティング部シニアスペシャリスト)という。インフラに限らず、斜面の崩落や土砂崩れなど災害の監視、プラントの配管やポンプ設備の異常検知にも活用が見込める。
 この技術を実用化する上では、データの伝送能力が生命線。無線センサーを活用すれば、配線が不要になるため設置工事が省力化できる上、コストも削減できるメリットがある。「今後は電池の寿命を伸ばしたり、装置の小型化を進めたい」(同)と、実用化に向けて詳細を詰める考えだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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